「渋谷駅」の乗り換えが不便なデザインになった理由

01.現代建築
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2008年に東京メトロ副都心線が開業し、地下5階までの空間が構築された「渋谷駅」は、「地宙船」と呼ばれる卵型のシェルが作られ、特徴的なデザインが誕生しました。
その後、2013年に東京メトロ副都心線と東急東横線の直通運転が開始し、もともと地上2階にあった東急東横線が地下5階に移動しました。

設計は安藤忠雄氏であり、心に残る駅を作ることを目指していたそうですが、これが駅の利用者にとって不便さを強いられ、かなりの酷評を受けてしまっています。

今回はそんな渋谷駅が、利用者からはどのように思われているのか、なぜこのようなデザインとなったのかを紹介していこうかと思います。

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かなりの酷評な渋谷駅

現在の安藤忠雄氏設計の渋谷駅となってから、ネット上では駅の利用者からかなりの酷評が上がっています。

JR東日本が発表した、2013年度の1日平均の駅別乗車人員ランキングで、19年連続で3位だった渋谷駅が、5位に転落してしまいました。2016年度には6位に順位を落としています。
乗車人数にすると、2012年度は41万2009人。2013年度は37万8539人と、実に3万3470人(全体の約8%)もの減少となります。

JR東日本によると、2013年3月に東急東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転の開始に伴い、東横線が地下5階に移ったことで、JR線との乗り換えが不便になったことなどが原因とみている。との事です。

地下5階から地上への移動は、エスカレーターが狭く、数が少ないので時間がかかるようです。また、ホームも狭くなっています。

地下空間には、このような「地宙船」と呼ばれる卵型のシェルが3層にわたって挿入されています。

印象に残るデザインではあるものの、この地宙船によって、東横線と田園都市線を利用する人々の導線が入り組んでおり、また通路幅も狭くなってしまっています。加えて、地下深くにあるせいか数多くの方向転換を要します。火災時などの緊急避難で苦労するのではないかと言われています。

基本的に、建物の中に曲線を入れるとデッドスペース(有効活用できない空間)が生まれてしまうので、ましてやこのような卵を入れてしまうと、どうしてもデッドスペースは多くなってしまいます。自分の家に、もし卵型の部屋が入っていたら、と考えると想像しやすいかと思います。

ただ、東急線から渋谷ヒカリエへのアクセスは良く、ヒカリエは東急系のビルのため、東急にとっては完全に失敗ではないのかもしれません。また、JRはライバルのため、JR線への乗り換えが不便になっているのではないかとも言われています。

もう一つ問題視されているのが、吹抜けの存在です。この吹抜けは、地宙船の中央部に位置しています。

吹抜けを作ったことで、エスカレーターが狭く少なくなっており、通路も狭くなっているのではないかと言われています。また、もし火事が発生すると煙が上昇したり、洪水が発生したら水がすぐ上昇してくるなど、危険性を訴えている方もいます。
吹抜けは開放感を出すのには有効な手段ですが、十分な広さと安全性を確保した上で、取り入れるべきものだと私も思います。

よく言われている対策としては、駅員が素早くかつ適切に誘導する。または、渋谷駅を利用しないこと、とまで言われてしまっています。この渋谷駅の一件で、安藤忠雄氏に恨みを抱いた人が多数出てきてしまいました。

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なぜこのようなデザインとなったのか

では、なぜ「地宙船」を挿入して吹抜けを設けたのか。その理由について紹介いたします。

地下空間には3層にわたって「地宙船」と呼ばれる、長さ約80m、幅約24mの卵型のシェルが挿入されていますが、この特徴的なデザインは開業前から大きな話題を集めていたそうです。
地宙船の素材はGRC(ガラス繊維補強コンクリート)であり、造形性や意匠性に優れているので建築物によく使われています。

安藤忠雄氏としては、「地宙船」は地下の卵であり、この卵から何かが生まれてくることをコンセプトとし、乗り換えで移動をする以外に何かを考えられたり、何かが生まれてくる駅を作りたいと考えていました。そのため、卵型シェルのデザインが考案されています。

地宙船とはいえ、人によっては王蟲のようにも見えます。(少なくとも私はそんな感じに見えました。。)
渋谷駅を利用する人達は、この駅の不便さに目を赤くして怒っている事でしょう。

地宙船の中央部には、地下2階のコンコースから地下5階のホームへ抜ける巨大な吹抜けが開いており、上層から電車が走行する姿が眺められるようになっています。
吹抜けを設けたのは、地下鉄に潜っても自分の居場所が分かり、不安を取り除くことを狙いとしていました。

吹抜けも卵型となっており、完全な円にするよりかは、楕円は中心を2つ持っているので動きがあって良いということで、現在のような吹抜けの形となりました。

吹抜けと地宙船によって、電車から排出される熱気を上昇させて外に出し、外からの空気を取り込んで自然換気をすることで環境負荷の低減をはかっています。また、曲面の壁を利用した気流の制御や、放射冷房システムも取り入れており、これも環境負荷の低減効果があるそうです。
インパクトのあるデザインのみでなく、併せて環境対策も考えた計画になっています。

しかしながら、地宙船と吹抜けを作った事によって、通行人の導線が複雑に入り組んでしまっており、通路幅も狭くエスカレーターの容量も少ないので、デザイン性や環境対策の他、実用性にも重きを置いて計画をして欲しかったという思いを抱いている人は多いと思います。

安藤忠雄氏は、使う人の心に残る駅を作ろうと考え、渋谷に訪れた若者が、自分も何か面白いことを考えようという事を思うような駅を目指していました。東急の人も思い切った決断だったと思います。
安藤忠雄氏の建築は、光の取り入れ方が絶妙でありデザインが良い建築も多いので、そこに使いやすさも加えられたら、より良い建築が出来そうな気がしています。

渋谷駅を見た若者が面白いデザインを考えるだけでなく、意匠性と実用性を両立させたものを誕生させる方が出てくることを願って、今回はここで閉めたいと思います。

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アクセス

電話03-5458-5143
住所東京都渋谷区道玄坂2-1-1


参考元:

JR東日本:東日本旅客鉄道株式会社
KEYPERSON|渋谷文化プロジェクト
1109.使えない渋谷駅をデザインした安藤忠雄、熊本駅のデザインも: 院長の独り言
東急東横線 渋谷駅 (東京メトロ副都心線相互直通運転化事業) | 新建築.online/株式会社新建築社

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