川崎市の等々力緑地には、大規模なメインスタンドの「等々力陸上競技場」があり、公園の緑と一体となった臨場感溢れるスタンドを持っています。2016年度には、国内の優秀建築選100選に選出されています。
サッカーJ1の川崎フロンターレの本拠地であり、競技場には4つの幅広いゲートがあるため、数多くのファンが押し寄せてもスムーズに利用出来ます。(コロナ禍のため、しばらくは無観客か入場制限になりますが。)
今回はそんな等々力陸上競技場の建築を紹介します。
公園と一体となったメインスタンド
等々力陸上競技場は、等々力緑地に開かれた公園一体型スタジアムとなっています。
視線や空気の抜けを意識して、巨大壁面を作らないようにしており、公園の丘をイメージして作られた前面のデッキには植樹が施され、要所に光りを取り入れる吹抜けを作っています。
屋根の高さを抑え、再生木を使った軒天が公園の緑と調和させています。木質な軒天を前面に出すことで、大規模ながらも暖かみのある建築が出来上がっています。
観客を迎え入れるゲートは広々と緩やかにつながっており、公園の丘を登っていくような感覚となりそうなアプローチです。
屋根の一部が入口に対して大きく開かれており、そのまま内部に引き込まれるように考えられた屋根デザインです。やはりこのゲートも階段幅が広々としています。
その他にも公園と一体となる工夫として、公園のように競技場内の店舗を分節させています。
また、環境にも配備されており、大屋根の上には太陽光パネルを設けて電源として利用していたり、LED投光器をスタジアム照明に採用していたり、屋根面で雨水を集めて浄化してトイレの洗浄水として利用したりなど、数々の省エネ技術が採用されたスタジアムとなっています。
臨場感が高まるスタンド
スタンドは、全長約20mの斜め柱とV柱で構成され、サイトPCa(敷地内でプレキャスト部材を製造し取り付ける工法)によって強度の向上を図り、意匠性も良くしています。
水平力や引張力などの応力を強固な斜め柱とV柱で負担することで、フィールドに近づけた超前傾のスタンドを実現し、臨場感を高めています。
屋上にもスカイテラスが設けられているのですが、超前傾のスタンドによって、臨場感溢れる試合が観戦出来るのではないかと思います。
2022年以降に球技専用スタジアムへ改修予定
2021年5月27日に川崎市から等々力緑地再編整備実施計画の骨子案が出され、2021年6月1日より市民の意見が募集され、2022年2月の計画改定に向けて動き出しています。
計画の内容としては、等々力陸上競技場の陸上トラックを廃止し、球技専用スタジアムに改修され、加えて観客席を現在の約2万7000人から約3万5000人に増やす計画となっています。陸上競技については、緑地内にある既存の補助競技場が改修され、そこが使われる予定です。
要は、サッカーと陸上が行われる場所が一緒になっているのを、別々の場所にする計画です。
2021年6月現在は、先ほど述べた前面のメインスタンドと、裏面のコの字型に配置されたサイドスタンド・バックスタンドで構成されており、メインスタンドの方は2015年に完成したばかりのためそのまま活用し、サイドスタンド・バックスタンドが改修予定となっています。
陸上トラックがなくなることで、施設がコンパクト化され、スタンドと芝生のピッチとの距離が近付くので、今よりもさらに臨場感のある試合が観戦出来るのではないかと思います。
建築概要
設計 | 日本設計、大成建設 共同企業体 |
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施工 | 大成建設 横浜支店 |
建築面積 | 10,154.02㎡ |
延床面積 | 21,853.86㎡ |
階数 | 地上6階 |
構造 | 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造、一部プレキャストコンクリート造 |
工期 | 2012年10月~2015年3月 |
アクセス
電話 | 044-722-0303 |
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住所 | 神奈川県川崎市中原区等々力1 |
アクセス | <電車> JR南武線 武蔵中原駅 徒歩15分 東急東横・目黒線 新丸子駅 徒歩15分 <バス> 武蔵小杉駅、武蔵溝ノ口駅、高津駅、武蔵中原駅、新丸子駅から、市営等々力グランド入口へのバスが出ています。 市営等々力グランド入口 下車徒歩5分 |
参考元:
・チケット・観戦 | KAWASAKI FRONTALE
・川崎市、陸上競技場を球技専用に改修 等々力緑地: 日本経済新聞
・武蔵小杉ライフ 公式ブログ
・2017.02 「等々力陸上競技場メインスタンド」がJIA優秀建築選(100選)に選出│de’-TAISEI DESIGN