渋谷大開発プロジェクトのひとつ、渋谷駅東口の目の前に建つ「渋谷ヒカリエ」は、店舗や劇場、オフィスなどが入った複合型の超高層ビルとなっており、渋谷の街のランドマークとなっています。
B3階~7階は商業施設、8階はクリエイティブスペース、9階はイベントホール、11階はスカイロビー、11~16階は東急シアターオーブという劇場、17~34階はオフィスといったフロア構成となっており、異なる機能が重層化されています。
設計は、日建設計と東急設計コンサルタントが共同で手がけており、日建設計が外装デザイン・ホール・劇場・オフィス、東急設計コンサルタントが商業施設を設計しています。用途ごとに積み木を組み上げるというコンセプトのもと作られました。
今回はそんな渋谷ヒカリエの建築の見どころを紹介します。
積み木を組み上げたような外観
渋谷ヒカリエの外観は、用途の区切りとなる6階・11階・17階の各フロアをセットバックさせ、分節を強調させています。まさにコンセプト通り、積み木を組み上げたような外観となっています。
セットバックした部分には植栽が施されています。6階の植栽部分は、当初バルコニーとしての使用を想定しており、少し改造することによって、来訪者がバルコニーに出られるようになっています。
このように用途が異なる建物は、高層部と低層部で平面形状が異なるため、構造計画が難しくなります。とくに中央部にあたる11~16階は大空間をもつ劇場になるため、大変だったかと思います。
構造としては、劇場の両脇に建物の上から下まで貫く2本一対の大黒柱を配置させ、劇場の上部には2階層分ある大型トラス(スーパービーム)を設置して、構造体を作り上げています。
大黒柱には強固なCFT柱を採用しています。CFT柱とは、円形または四角形の鉄骨鋼管の中にコンクリートを充填した柱であり、圧縮力や曲げ、変形に対してより強い柱となります。CFT柱を採用することで、その他の鉄骨柱への応力負担を軽減させています。
構造を工夫することによって、地上34階、高さ182.5mもの超高層を実現させているわけですが、ヒカリエが建っている場所は都市再生特別地区(特区)の指定を受けており、容積率が1370%まで緩和され、容積率の規定の面でも超高層を実現させています。
渋谷ヒカリエがある渋谷区渋谷2丁目21番地の場合、通常は多い所で容積率900%が上限なので、かなり緩和されていますね。
渋谷駅から非常にアクセスしやすい
渋谷ヒカリエの入口は地下3階から地上4階まで吹抜けとなっており、各階をエスカレーターで繋いでいます。これはアーバンコアとよばれ、東急線や東京メトロの渋谷駅構内で発生する熱を自然換気で地上に逃がすようにしています。自然換気を併用することで、空調設備の負荷を軽減しています。
渋谷駅からアクセスしやすく、徒歩0分の直結となっています。空調設備の負荷軽減に加えて、人々の導線をスムーズにしているので、アーバンコアは重要な役割を果たしています。上からのぞき込むと、ずっと下の地下3階まで見えます。
外部から見ると、このような円柱形ルーバーとなっており、積み木を組んだような外観デザインの一部となっているように見えます。
どの路線で渋谷駅に来ても、ヒカリエの商業施設と効率よく繋げており、簡単に訪れられるようになっています。
ちなみに、このアーバンコアの他にも、商業施設内のエスカレーター部分やオフィスの中央部にも、上から下まで貫くヴォイド(穴)を設けており、建物内部の熱を逃がして冷えた外気を取り入れています。当初から省CO2が計画され、設備のエネルギー負荷軽減を実現させています。
クリエイターが集結するクリエイティブスペース
渋谷ヒカリエの8階には、クリエイターたちが集結するクリエイティブスペース「8/」があります。ここはギャラリーやショップ、カフェやシェアオフィスがあります。
最も渋谷らしい場所になっており、クリエイター達が手がけた様々な展示会が行われ、一般の方も気軽に訪れる事ができ、作品鑑賞を楽しむ事が出来ます。
通路は真っ黒な内装、各部屋は白い内装となっているので、ギャラリー等のスペースがより際立っています。
渋谷の街を一望出来るスカイロビー
渋谷ヒカリエの11階には、渋谷の街を一望出来るスカイロビーがあります。このスカイロビーは入場料がかからず、ヒカリエの一番の見どころと言っても過言ではありません。
上の画像はエレベーターからスカイロビーに向かう途中の様子です。天井が展望空間に向かって反り上がっており、まるで空に向かって飛んでいく感覚になります。
スカイロビーは広々とした大空間になっています。都会の喧騒を離れた伸びやかな場所です。
開口部からは、渋谷ヒカリエのすぐ近くに建つ、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアが間近に見えます。
場所によっては、新宿方面の景色が眺められます。MIYASHITA PARKや国立代々木競技場、新宿のビル群がヒカリエから見えます。
スカイロビーには、渋谷ヒカリエ、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアを中心としたレゴブロックが展示されていました。
レゴ展示のすぐ側には、渋谷周辺のジオラマが展示されています。
渋谷ヒカリエをはじめ、100年に1度と言われる渋谷大開発が進む現在、渋谷の街の景色は様変わりしており、今後の渋谷の展望から目が離せません。
建築概要
設計 | 日建設計・東急設計コンサルタントJV |
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施工 | 東急・大成建設JV |
敷地面積 | 9,640.18㎡ |
建築面積 | 8,314.09㎡ |
延床面積 | 144,545.75㎡ |
高さ | 182.5m |
階数 | 地上34階、地下4階 |
構造 | 鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造 |
工期 | 2009年6月〜2012年3月 |
ご利用案内・アクセス
開館時間 | 11:00〜20:00(ShinQs、Cafes&Restaurants、Creative Space 8/) |
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休館日 | 年中無休 |
電話 | 03-5468-5892 |
住所 | 東京都渋谷区渋谷2-21-1 |
アクセス | 各線 渋谷駅 直結 |
※2021年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。
参考元:
・渋谷ヒカリエ 公式サイト
・構造デザインマップ編集委員会「構造デザインマップ東京」,総合資格学院,2014年6月20日,46P
・コンクリート充填鋼管(CFT)構造 日本国土開発
・都市計画図等(用途地域・日影規制等)の閲覧 | 渋谷区公式サイト
・技術で探るビッグプロジェクト(2)渋谷ヒカリエ | 日経クロステック(xTECH)
・ターミナルが変わる(3)渋谷ヒカリエ | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
・渋谷ヒカリエ 東京都渋谷区・超高層オフィスビル