武蔵小杉駅から徒歩10分の位置にあるマンション「GATE SQUARE 小杉陣屋町」は、かつて肥料商から銀行の創業や県議会議員を務めた原家の旧母屋が建っていた場所であり、表門(陣屋門)や稲荷社などの原家の歴史が残された「陣屋門プラザ」があります。
陣屋門プラザは、GATE SQUARE 小杉陣屋町の一角にある一般に開放されたエリアであり、原家の歴史を味わう事が出来ます。陣屋門プラザにある、表門(陣屋門)や稲荷社は当時の姿をそのまま残しており、国登録有形文化財建造物に登録されています。また、旧母屋は川崎市多摩区にある日本民家園に移築・復元され、川崎市の重要歴史記念物に指定されています。
今回はそんな陣屋門プラザにある表門(陣屋門)と稲荷社、そして日本民家園に移築・復元された原家の旧母屋を紹介します。
原家旧住宅表門(陣屋門)
小杉陣屋町は、徳川家康が江戸城への交通で利用した中原街道の要所で、宿場町として栄えました。そんな小杉陣屋町の中原街道沿いに、原家旧住宅の陣屋門が建っています。
陣屋門は明治後期に建築されており、旧母屋の上棟時期である1911年(明治44年)には既にあったのではないかと確認されています。
総欅造りの薬医門と呼ばれる様式で、屋根は切妻造りの桟瓦葺き。桟瓦(さんがわら)は一般的によく見る波型の形をした瓦です。そして親柱の基礎には安山岩と思われる石が使われています。
親柱や扉板、彫刻懸魚(けぎょ)には、欅の巨木から製材した材料が使われています。懸魚(けぎょ)とは、屋根の側面に付けられた装飾であり、火災から守るためのおまじないとして、日本家屋によく付けられています。
欅造りの梁が立派な瓦屋根を支え、荘厳な意匠の門を作り出しています。
こちらは陣屋門を入ってすぐにある原家御神木。江戸時代初期に植樹された御神木であり、下部が傾斜になっている幹形状は、日本庭園の味わいある景色を彩っています。
原家旧住宅稲荷社
稲荷社は明治後期に建築されており、陣屋門と同じく旧母屋の上棟時期である1911年(明治44年)には既にあったのではないかと確認されています。
原家の屋敷神として信仰され、現在も小杉神社の例大祭の神酒所として地域の人々で賑わっています。
社殿の周りを覆屋(おおいや)で覆われています。覆屋は、土台以外の部分は建築当時そのままの姿で残されています。
社殿は陣屋門と同じく総欅造り。一間社流造(いっけんしゃながれづくり)と呼ばれる、入口側の屋根が大きく流れ、正面の柱間が1間(柱2本)の様式で作られています。そんな社殿は、石を二重にした土台の上に建っています。覆屋の土台についても石を二重にしていますね。
陣屋門の装飾もそうですが、社殿についても精巧につくられており、当時の匠の技が光ります。
ギャラリー
陣屋門プラザには、マンションの一角がギャラリーになっており、原家や小杉陣屋町の歴史にまつわるものが展示されています。
小杉陣屋町周辺の地図を用いた説明や、鬼瓦などが展示されていました。
ギャラリーのすぐ隣には、実際に原家で使われていた蔵の扉が展示されています。蔵は昭和初期に建てられ、GATE SQUARE 小杉陣屋町が建設されるまで約80年間使われていました。
扉のガラス部分にある銅製の亀甲網や、分厚い扉を支える蝶番(ちょうつがい)など、建築当時そのままの姿で保存されています。そして、マンションの壁タイルが蔵の扉に合ったデザインになってます。
ギャラリーの下にあるのは蔵の基礎石。小松石が用いられ、ノミで彫った跡が伺えます。
中原街道から曲がって入る道路沿いには、小杉陣屋町周辺の歴史を描いた面影雪洞(おもかげぼんぼり)と呼ばれる電灯がいくつか置かれています。徳川家康が好んだ鷹狩りや多摩川花火大会、多摩川を渡る交通手段だった丸子の渡しや丸子橋が描かれ、情緒ある風景を作っています。
周辺は新しい建物が建ち並ぶ中、陣屋門プラザのエリアは明治時代の姿を残して佇んでいます。
原家の旧母屋(日本民家園)
それでは、川崎市日本民家園に移築・復元された原家の旧母屋はどんな建物なのか、併せて紹介します。
1891年(明治24年)から1913年(大正2年)に建築された旧母屋は、1991年(平成3年)に日本民家園に移築・復元され、現在は明治を代表する近代和風建築として、2001(平成13年)に川崎市の重要歴史記念物に指定されています。1945年代(昭和20年代)半ばに「陣屋荘」という割烹料亭(かっぽうりょうてい)を営んでいたこともあり、地域の人々に親しまれた歴史もあります。
建物は、陣屋門や稲荷社と同じく総欅造り。屋根は入母屋造りの瓦葺きとなっています。陣屋門が立派なだけに、旧母屋もやはり立派な見た目で作られています。
GATE SQUARE 小杉陣屋町のマンションのデザインは、原家の旧母屋の蔵や屋根をモチーフにして設計されています。
入口には精巧な彫刻が施された懸魚(けぎょ)が装飾され、原家の豪華さを感じます。
間取りは、14畳間が2つ、10畳間が3つ、8畳間が4つ、6畳間が2つと、かなりの広さを持つ住宅です。内装を見ても、豪勢な電灯や、高さある長押(なげし。扉の上の横架材)などが、原家住宅の豪華さを物語っており、かなりの財産があったのではないかと想像出来ます。
ご利用案内・アクセス
GATE SQUARE小杉陣屋町 陣屋門プラザ
住所 | 神奈川県川崎市中原区小杉陣屋町1-15-18 |
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アクセス | 東急線 新丸子駅 徒歩8分 JR線・東急線 武蔵小杉駅 徒歩10分 |
日本民家園 原家住宅
開園時間 | 3月~10月:9:30〜17:00 11月~2月:9:30~16:30 ※入園は30分前まで |
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休園日 | 月曜日(祝日の場合は開園)、祝日の翌日(土日の場合は開園)、年末年始 |
入館料 | 大人 :500円 高・大学生:300円 中学生以下:無料 65歳以上 :300円 |
電話 | 044-922-2181 |
住所 | 神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-1 |
アクセス | <電車> 小田急線 向ヶ丘遊園駅 南口より徒歩13分 小田急線・JR南武線 登戸駅 南口より徒歩25分 <バス> 向ヶ丘遊園駅から川崎市バス(溝口駅南口行) 生田緑地入口 下車徒歩3分 向ヶ丘遊園駅から川崎市バスまたは東急バス(たまぷらーざ駅行) 生田緑地入口 下車徒歩3分 登戸駅から川崎市バス(生田緑地行) 生田緑地 下車徒歩1分 |
※上記は日本民家園の情報です。原家住宅以外も観覧出来ます。
※2021年6月現在の情報です。最新の情報は日本民家園の公式サイトでご確認下さい。
参考元: