「渋谷ストリーム」は渋谷の環境をガラリと変えたビル

01.現代建築
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渋谷駅周辺の再開発事業として、2015年に着工、2018年に竣工・開業した「渋谷ストリーム」は、渋谷の環境と人々の流れをガラリと変えました。

デザインアーキテクト(意匠設計)は、シーラカンスアンドアソシエイツ。東京大学大学院在学中に、小嶋一浩氏、伊藤恭行氏ら7人が共同で設立した設計事務所です。シーラカンスはこれまでの作品で、日本建築学会賞、村野藤吾賞、グッド・デザイン賞などの功績を残しています。

今回はそんな渋谷ストリームの建築を紹介します。

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大規模な渋谷再開発のひとつ

2013年に東横線と副都心線との相互乗換のため地下化し、それによって、もともと東横線渋谷駅のホームや路線があった場所に、渋谷ストリームの開発が行われました。

敷地の側を流れる渋谷川の環境改善や、歩行者ネットワークの整備、地下車路ネットワークの整備による渋谷駅周辺の交通負荷の軽減などの公共貢献により、容積率が1350%に緩和され、より高さのある建築が可能となりました。
渋谷ストリームがある渋谷区渋谷3丁目21番地の場合、通常は多い所で容積率900%が上限なので、かなり緩和されています。

なお、この渋谷ストリームは様々な用途に使用されています。

14~35階はオフィスとなっており、総賃貸可能面積は約46,000㎡もの広さを有します。
4階と9~13階はホテルとなっています。
4~6階はホールがあり、音楽ライブなどを上演しています。約250㎡の面積で、収容人数はスタンディングで約700名。
4階にはアクティビティコートとよばれる運動広場があります。
1~3階はショップやレストランが並び、総店舗面積は約3,000㎡と割と広めです。
1階はスクウェアとよばれる渋谷川に面したグランドフロアがあり、様々なイベントが開催されます。

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昔の鉄道の記憶を継承

かつて、東急東横線の旧渋谷駅のホームおよび線路跡地等が地上にあったわけですが、当時の部材やデザインを各所に使用することで、鉄道の記憶を継承しています。

渋谷ストリームのカマボコ屋根と目玉壁

渋谷駅から渋谷ストリームへ向かう途中、上の画像のようなカマボコ屋根と目玉壁がデザインされた箇所があります。
旧東横線渋谷駅を利用していた方や、駅の近くをよく通っていた方であれば、なじみのあるデザインだと思います。

その他にも、ビル内の貫通通路のショップ街やデッキの床には、以下のように路線をモチーフにしたラインが埋め込まれています。

渋谷ストリームの商業施設と路線を模した床

このように昔の鉄道の記憶を継承しつつ、新しい施設・渋谷ストリームが作られています。

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圧迫感を緩和したビル外観

外観は、縦長のホワイトパネルをランダムに配置し、活発的な地上の空気から穏やかな空へのグラデーショナルなデザインとしており、圧迫感を軽減しています。
川の流れのようなデザインが、渋谷ストリームという名にふさわしい外観であり、渋谷の街の特色に合っています。

渋谷ストリーム外観

白いアルミパネルは、熱負荷軽減や、外気の取り込みといった機能を持っています。
内部からは、柱の位置の周囲にホワイトパネルをレイアウトすることで、内から外への視線の遮蔽を減らし、眺望が見渡せる明るい内部空間となっています。

引用:新建築 2018年11月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社

またオフィス階は、エレベーターやトイレ、給湯室などのコア部分を南西側に配置し、事務室の3面が外部と接するようにして、より明るい開放的なオフィス空間となっています。

引用:新建築 2018年11月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社

屋上と低層階の壁面は緑化されており、渋谷川沿いの桜並木と相まって自然に満ちた空間で、まさに都会のオアシスです。

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劣悪な渋谷川の環境を一新して作られた人々の流れ

再開発される前は東急東横線の高架橋があり、中層のビル群が渋谷川に背を向けて並んでいた場所で劣悪な環境だったそうです。

そこで官民連携によって、約600mにおよぶ渋⾕川の⽔辺空間の再⽣・整備が行われ、水流の復活、そして代官山方面へと続く遊歩道の整備もされ、新たに人々の流れが創られました。

渋谷川沿いの手すりには長いカウンターがあり、お店でドリンクを購入して、川のせせらぎを感じながら気軽に休憩出来ます。

並木・植物がふんだんに植えられ、渋谷川の劣悪な環境が一新されています。

新しく作られた渋谷から代官山へと続く遊歩道には、路面店のような店舗が並びます。

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アーバンコアの計画によって作られた人々の流れ

渋谷ストリームでは、アーバンコアが計画され、地下への自然光の導入を試みられています。
アーバンコアとは、渋谷駅周辺の歩行者の移動を地下と地上の間でスムーズな移動を実現するものとなります。渋谷駅は乗り換える路線によって、相当な縦移動を要します。その縦移動を容易にし、渋谷の街へアクセスしやすくする計画がなされています。

こちらのビルの手前にあるガラス張りの棟が、アーバンコアが計画されたD棟です。

引用:新建築 2018年11月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社

D棟内部は明るく開放的な空間となっており、縦移動をエスカレータでつなぐのはもちろんのこと、渋谷の街へのアクセスをしやすくしたり、地下通路の環境改善がされています。

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ビル内の貫通通路によって作られた人々の流れ

ショップ・レストランがある低層部は、外部と内部をつなぐポーラスとよばれる孔を設けて空間を作っています。路地のような渋谷らしい空間の創出によって、賑わいを作り出しています。

ポーラスにはこのような大階段があり、手前の稲荷橋広場と連携して様々なイベントが行われます。大階段の蹴上げ部分には映像が流れるようになっており、まさに渋谷ストリームの顔とも言える場所です。
大階段を登った先に貫通経路があります。

こちらが貫通通路であり、ストリームラインとよばれています。

サイン機能と立体的な導線の可視化を意図として、エスカレーターやエレベーターなどを鮮やかで目立ったイエローにしています。

各店舗は、ストリームラインににじみ出すように客席を配置し、ここでも路面店のような店舗が並びます。

ストリームラインは外部と繋がるポーラスを各所に設けて、街のあらゆる方向に人々の流れを作り出し、ハブのような機能を持たせています。

こちらは3階南西側にある休憩スペースです。将来的に東西通路が設けられ、渋谷駅の西側にある桜丘町や、JR渋谷駅南改札と接続される予定です。
アーバンコアから大階段とストリームラインを経由して、桜丘町に抜けられるようになり、東西に分断された渋谷の街がつながります。

敷地の横を流れる渋谷川やストリームラインの人々の流れだけでなく、クリエイティブワーカー達がこの場所で交流したり、様々な体験をすることで新しい時代の流れを生み出したいという想いから、「渋谷ストリーム」と名付けられました。

クリエイティブワーカーを魅了する新しいビジネス環境であり、また訪れた人々を魅了する新しいアクティビティ環境でもある渋谷ストリーム。観光スポットとしてオススメ出来る場所です。

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建築概要

全体

設計東急設計コンサルタント
デザインアーキテクツ:小嶋一浩+赤松佳珠子/シーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)
施工渋谷駅南街区プロジェクト新築工事共同企業体
(東急建設株式会社・株式会社大林組)
敷地面積7,109.93㎡
建築面積6,649.86㎡
延床面積118,379.92㎡
工期2015年8月~2018年8月
開業2018年9月13日

A棟

引用:新建築 2018年11月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社
用途ホール、飲食店舗、駐車場
敷地面積934.36㎡
建築面積1,713.21㎡
延床面積7,214.18㎡
最高高さ42.814m
構造鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
階数地下4階、地上7階、塔屋1階

B-1棟

用途事務所、ホテル、飲食店舗、物販店舗、駐車場
敷地面積4,774.52㎡
建築面積4,166.75㎡
延床面積108,376.68㎡
最高高さ179.950m
構造鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造
階数地下4階、地上36階、塔屋1階

C-1棟

引用:新建築 2018年11月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社
用途昇降機
敷地面積487.14㎡
建築面積10.71㎡
延床面積21.42㎡
最高高さ11.775m
構造鉄骨造
階数地上2階

D棟

用途通路等
敷地面積524.43㎡
建築面積434.45㎡
延床面積375.93㎡
最高高さ15.050m
構造鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
階数地上2階、地下2階
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アクセス

住所東京都渋谷区渋谷3-21-3
アクセスJR線、東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線
渋谷駅 C2出口直結


参考元:

渋谷ストリーム/SHIBUYA STREAM 公式サイト
C+A – Coelacanth and Associates | 渋谷ストリーム
・新建築 2018年11月号 @新建築社
「アーバンコアって、何だ?」 渋谷の「谷地形」を克服する仕掛け|渋谷文化プロジェクト
都市計画図等(用途地域・日影規制等)の閲覧 | 渋谷区公式サイト

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