「せんだいメディアテーク」の建築構造の特徴とデザインの魅力

01.現代建築
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仙台市民に愛される公共施設「せんだいメディアテーク」は、美術や映像文化の活動拠点として、どんな人でも様々なメディアを通じて、自由に情報のやりとりを行う施設となっています。

「メディアテーク」とはフランス語で「メディアを収める棚」となり、その名のとおり、図書館やギャラリー、スタジオなど様々なメディアが集結した複合施設です。

設計は、元町・中華街駅やTOD’S表参道ビルなどを手がけた伊東豊雄氏であり、せんだいメディアテークが世界で認められ、世界中から建築マニアが訪れる場所となりました。

今回はそんな、せんだいメディアテークを紹介します。

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自由な場所を提供

せんだいメディアテークは書籍、映像、音楽を収蔵した複合施設で、ギャラリーやシアター、スタジオやワークショップなど、様々な機能を提供し、誰もが自由に発信出来る環境を提供しています。
図書館やカフェもあり、誰もが気軽に自分に合った使い方が出来る芸術文化施設となっています。

また、目や耳が不自由な方への情報提供サービスや、バリアフリー施設も備えています。

もともとメディアテークは、定禅寺通交通局跡地に新市民ギャラリーを建設する方針でした。
その後、新市民ギャラリーを青葉区図書館との併設にする方針となりました。
新市民ギャラリーを計画する際、市民の各年齢層からの意見を聞き、新市民ギャラリー・青葉区図書館・映像メディアセンター・視聴覚障害者のための情報提供施設の機能を併せ持つ事となりました。

例えば自由な機能のひとつ、1階のオープンスクエアでは様々なイベント等を行うことができ、可動壁により四面を囲い、ホールとしても利用可能です。

3、4階には仙台市民図書館があり、施設のちょっとした利用もできます。

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建築構造の特徴

建築構造の大きな特徴として、柱の役割を担う13本のチューブ(鉄骨独立シャフト)、床の役割を担う7枚のプレート(鉄骨フラットスラブ)で構成し、その周りをスキン(ガラス張り)で覆う構造となっています。
また、地下1階には地震エネルギー吸収機構を設置しています。

スクリュー状に構築されたチューブは大小様々で、柱としてだけではなく、ネットワークや電気、水道、空調などの設備、エレベーター・階段など垂直動線を通すパイプとして利用されています。

また、屋上に設置された採光装置が太陽光を反射し、チューブを通して建築内部の各フロアに取り入れられます。

チューブは鉄骨を一本ずつ溶接して構築されました。鉄は溶接するとその熱で膨張してひずみが発生します。ひずんだ箇所に切り込みを入れ、再び熱して形を整えるといった、かなり手のかかる作業となったようです。見た目からしても構築が難しそうなチューブです。

プレートの内部は、ハニカム構造という鉄板と鉄板の間をハチの巣状とする鋼鈑サンドイッチ構造となっており、天井床の強度を高めています。

チューブとプレートの構造によって大スパンとすることが可能となり、柱の少ない大空間を生み出しています。

外周を覆っているガラス張りはスキンと呼ばれ、南側(定禅寺通り沿い)は2重ガラスとなっています。そしてスキンの上部は開閉機構が設置されており、2重ガラスと開閉機構で空調コストを軽減しています。

夏期は機構を開放し、2重ガラスの間に空気を通してガラス面を冷却します。
冬季は機構を閉めて、断熱性の高い空気層を作ります。

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魅力的で自由なデザイン

せんだいメディアテークは、設計競技にて伊東豊雄建築設計事務所の案が最優秀者に決定しました。
その後、メディアテークは建築界で認められ、グッドデザイン賞(大賞)、BCS(建築業協会)賞、建築学会作品賞など、数々の賞を受賞しています。

建物の前が定禅寺通りのけやき並木となっており、建物内のラウンジから眺めることが出来ます。

建物内部は、各階異なる平面計画であり、フロアごとに階高や、床・天井のデザイン、家具や照明が違います。

チューブが通る穴についても、フロアごとにそれぞれ位置も大きさも違います。これはチューブの形がフロアごとに変化しており、海にゆらめく海藻がモチーフとなっています。

上の画像は6階となるのですが、床は松材のフローリングとなっており、白い塗装仕上げとしています。
天井は、丈夫なデッキ材によるルーバ天井。6階にあるギャラリーも同じ天井であり、アート作品展示などの際、物を吊るのに使えます。

5階の床も松材のフローリングですが、色は黒で、環境にやさしい植物性の含浸塗料を使用しています。

5階、6階に構築された松材のフローリングは足音を吸音し、ギャラリーを静かに観覧することができます。
その他の階の床もまた違ったデザインとなっているので、床にも注目してみるのも良いかと思います。

また、天井高さもフロアごとに変化しており、ギャラリー部屋名の後に付いている4桁の数字は天井の高さを表しています。
ギャラリー3300は3300m(3.3m)、ギャラリー4200は4200m(4.2m)です。

市民図書館がある階は天井高が高く、圧迫感を感じさせないようにしています。

市民図書館の照明は、ペンダント型の間接照明を天井から吊り下げており、本に直接照明が当たらないよう目に優しい照明となっています。

市民図書館東側壁の内側の仕上げはフロストミラー貼りとなっています(上の画像奥)。フロストミラーとは、すりガラスのように加工した鏡で、店舗などの壁面を装飾するのに使われます。この図書館では、本を日差しから守るため設置されています。

次に南側のラウンジですが、そこでは様々なデザインの椅子が置かれています。

この黒いフラワーチェアは、伊東豊雄建築設計事務所に所属していた妹島和世氏のデザインとなります。
他にもフロアごとのラウンジに、色々なデザインの椅子が置かれ、家具デザインも自由な感じです。

構造材の各所には、著名人の名言が記述されています。

このような名言を探してみるのも楽しいと思います。

設計者の伊東豊雄氏は、世の中が管理されることを好まず自由を好み、その人柄が反映された自由な建築と言えます。

寄り道気分で入れる所なので、仙台に訪れた際には是非立ち寄ってみて下さい。

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建築概要

設計意匠:伊東豊雄建築設計事務所
構造:佐々木睦朗構造計画研究所
設備:総合設備計画、大瀧設備事務所、イーエスアソシエーツ
敷地面積3,948.72㎡
建築面積2,933.12㎡
延床面積21,682.15㎡
最高高さ36.49m
階数地下2階、地上7階、屋上階
構造鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
工期1997年12月17日~2000年8月10日
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ご利用案内・アクセス

開館時間9:00~22:00

※仙台市民図書館・映像音響ライブラリーは以下
 9:30~20:00(土日祝は~18:00)
休館日1月~11月の第4木曜
年末年始(12月29日~1月3日)

※仙台市民図書館・映像音響ライブラリーは以下
 月曜(祝日除く)
 祝日の翌日
 1月~11月の第4木曜(祝日の場合、翌日が休館)
 年末年始(12月28日~1月4日)
 特別整理期間
電話022-713-3171
住所仙台市青葉区春日町2-1
アクセス<地下鉄>
 南北線 勾当台公園駅 公園2出口から徒歩6分
 東西線 大町西公園駅 東1出口または西1出口から徒歩13分
 東西線 青葉通一番町駅 北1出口から徒歩15分

<バス>
 仙台市営バス
 仙台駅前-60番(仙台TRビル前、地下鉄仙台駅 中央2出口前)のりば
 「定禅寺通市役所前経由交通局大学病院」行きで約10分
  ※系統番号がJまたはXで始まるバス
 「メディアテーク前」下車

※2020年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。


参考元:

せんだいメディアテーク 公式サイト
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casa – ハッシュカーサ | 暮らしとデザイン

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