「キュープラザ二子玉川」の設計者は?外観デザインの特徴とは?

01.現代建築
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東急不動産が展開している都市型商業施設の「キュープラザ二子玉川」は、二子玉川ライズと玉川高島屋の近くの好立地にあり、昔廃線になった砧線を面影を残しつつ、街の賑わいを演出した外観となっています。

キュープラザは原宿、恵比寿、心斎橋に続いて、二子玉川が4番目になり、2017年4月28日に開業しました。

商環境のデザインは成瀬・猪熊建築設計事務所。東大などの教授を務めてきた成瀬友梨氏と、東京都立大学などの教授やグッドデザイン賞審査委員などを務めてきた猪熊純氏による建築事務所です。基本設計・監修は東急設計コンサルタント、実施設計は奥村組が担っています。

今回はそんなキュープラザ二子玉川の建築を紹介します。

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廃線になった砧線の面影を残したデザイン

キュープラザ二子玉川の外観

キュープラザ二子玉川がある敷地は、1969年(昭和44年)に廃線となった砧(きぬた)線の終着駅があった場所となります。そのため外観は、線路レール型の鉄骨や、枕木(レールの下に敷かれた木材)を用いて構成しており、歴史にふれあうことが出来るようになっています。

キュープラザ二子玉川の場所と廃線になった砧線のマップ

砧線があった当時は、田園都市線は玉川線と溝ノ口線、大井町線は二子玉川線でした。上画像の赤線で示された路線が砧線であり、かつてキュープラザがある位置から砧地区方面へ路線が延びていました。

キュープラザ二子玉川の外観

外部階段を覆う形で、枕木で作られたパネルが配置されています。入居している店舗の賑わいを周囲に開くため完全には覆わず、外観デザインとして施されているのと同時に、店内からは集合住宅への視線を遮り、外からはエレベーター部分を隠す役割を担っています。

キュープラザ二子玉川の外観の枕木パネル

何枚も重ねられた枕木のパネルは、万が一、枕木が外れてしまってもワイヤーによって落下を免れるようにされてます。近づいて横から見ると、その様子が伺えます。

キュープラザ二子玉川の外観の枕木パネル
キュープラザ二子玉川の外観の枕木パネル

枕木パネルは場所によって縦横に方向を変えており、外観デザインを構成しています。また、所々に開けられた孔には照明が仕込まれており、夜になると違った表情を見せます。

引用:キュープラザ二子玉川|東急不動産SCマネジメント | © 2021 TOKYU LAND SC MANAGEMENT.

砧線の面影を残すもう一つの手法として、枕木を支える鉄骨をレール形状にしています。

キュープラザ二子玉川の外観の鉄骨枠
キュープラザ二子玉川の外観の鉄骨枠

線路に使われるレールでは、建材として使うには強度が足りないため、鉄骨を押出成形(おしだしせいけい。加熱してドロドロにしたものを型の中から押し出し、そのまま冷やして固める工法)によってレール型に作成して使用しています。

キュープラザを展開している東急は、昔の面影を残す会社のようで、キュープラザ二子玉川の他にも、渋谷ストリーム東急東横線の反町駅などにも面影を残した様子が見られます。

渋谷ストリームのカマボコ屋根と目玉壁
渋谷ストリームの商業施設と路線を模した床

こちらは渋谷ストリームになりますが、東急東横線が副都心線との直通運転に伴う地下化がされる前は、地上に東横線の終着ホームがあり、かつて終着ホーム外観に使われていた白いパネルを残したり、地上の床にレールを埋め込んだりされています。

反町駅のフラワー通り

こちらは反町駅の上にある遊歩道。駅のホームが地下化される前は地上を走っていた記憶を残すため、遊歩道の床にレンガによってレールが貼られています。

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外部に開かれた賑わいのある演出

キュープラザ二子玉川の外観

キュープラザ二子玉川の外観デザインは、外装材を提案する要項で3社の指名コンペが行われたのですが、成瀬・猪熊建築設計事務所からは要項の枠を超えた提案がされました。外部階段を鉄骨フレームと枕木パネルで覆って、街路の続きとしてのファサード(前面)空間を作り、街の歴史に触れられるといった案です。

キュープラザ二子玉川の外部階段

外部階段と道路の間に樹木を植栽して良質な環境を作り、また、街並みと連続するように外部から徒歩で歩き続けて、全てのフロアの店舗にアクセス出来るようになっています。

キュープラザ二子玉川の外ベンチ

植栽の脇には木材の外ベンチを設け、歩いて来た人達がゆっくり出来る場を設けています。このベンチは川石を用いており、線路や多摩川をイメージしています。

キュープラザ二子玉川の2階外部通路

2階の外部通路にもベンチが設けられており、その横にも植栽を置いています。影となる位置にあり、森の下草をイメージした植栽となっています。

キュープラザ二子玉川の外部の鉄骨枠
キュープラザ二子玉川の外部の鉄骨枠

外部階段や通路からは、レール型鉄骨の構造体が間近で眺められます。

キュープラザ二子玉川の鉄骨構造体

レール型鉄骨の外部フレーム以外は、一般的なH型鋼の鉄骨で施工されているようです。

キュープラザ二子玉川の地下入口

地下への階段を降りるとすぐ店舗になっており、広いドライエリア(地下室に開口部を設けるため、建物の周囲の地面を掘って作るスペース)が設けられて、そこにテーブル・イスが並べられて開放感のある空間となっています。

周辺の街並みと調和し、かつ鉄道の歴史に触れられるキュープラザ二子玉川。廃線の面影を残した特徴的な外観は、一見する価値ありです。

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建築概要

設計商環境デザイン:成瀬・猪熊建築設計事務所
基本設計・監修:東急設計コンサルタント
実施設計:奥村組
施工奥村組
敷地面積約1,158㎡
延床面積約2,521㎡
階数地上3階、地下1階
構造鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
竣工2017年4月
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ご利用案内・アクセス

開館時間店舗により異なります
休館日店舗により異なります
電話03-6431-0131
住所東京都世田谷区玉川2-24-1
アクセス東急田園都市線・大井町線 二子玉川駅 徒歩1分


参考元:

成瀬・猪熊建築設計事務所 » Q Plaza FUTAKOTAMAGAWA
新商業施設「キュープラザ二子玉川」が4月28日開業、エリア初全4店舗が出店 | fashionsnap.com
キュープラザ二子玉川 | architecturephoto.net
キュープラザ二子玉川|東急不動産SCマネジメント
japan-architects.com: 成瀬・猪熊建築設計による外装デザイン「キュープラザ二子玉川」

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