「すみだ北斎美術館」の見どころは特徴的な建物

01.現代建築
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葛飾北斎が生涯のほとんどを過ごした墨田区に建てられた「すみだ北斎美術館」は、北斎を区民の誇りとして功績をたたえ、北斎のコレクションを保存・展示、そして研究・教育がされ、周辺地域の産業や観光に貢献して、地域活性化のため設立された美術館です。

1989年に墨田区が構想を始め、そこから実に27年後、この美術館は建設されました。

すみだ北斎美術館の設計は妹島和世氏。日本女子大学図書館や、西沢立衛氏との共同でSANAAとして手がけた21世紀美術館などを設計した建築家です。
すみだ北斎美術館では、周辺地域に溶け込むよう設計されました。

今回はそんな、すみだ北斎美術館の建築を紹介します。

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どんな美術館?

すみだ北斎美術館では、その名の通り葛飾北斎の作品が展示されている美術館ですが、以下の富嶽三十六景の展示はもちろんのこと、高精細画面モニタにて拡大出来る錦絵の鑑賞や、タッチパネルモニタにてめくり操作が出来る絵手本図鑑の鑑賞など、現代の技術を用いた次世代の美術館となっています。

また、北斎のアトリエが原寸大で再現された模型も展示されており、当時の北斎の作画風景を観賞出来ます。

他の美術館とはまた違った感覚で、北斎の作品を楽しむ事が出来ます。

1階はエントランス・図書館・講座室のパブリックスペースを配置し、入りやすい構成となっています。
2階は事務室・収蔵スペース、3・4階は常設・企画展示室となっており、浮世絵作品の保存・展示に適した温度や湿度などを保つよう機能・設備を備えています。

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なぜこのような外壁となったのか

すみだ北斎美術館は、外壁に淡い鏡面のアルミパネルを使用しています。

アルミパネルは約1,250×5,600mm、厚み3mmであり、アルマイト加工処理された後に電解研磨とエッチング処理を経て製作されたパネルです。
アルマイト加工とは、表面に人工的に酸化被膜を作り、錆びから守って強度を高める加工です。
電解研磨とは、電気分解の原理を利用して、金属の表面を溶かして研磨すること。エッチング処理とは、エッチング液などの化学薬品を利用し、化学反応による腐食作用によって溶解して加工する方法です。

また、アルミパネルと下地材との距離を取ることで、パネルの間から下地材が見えないようにし、平滑な面を作り出しています。

このようにアルミパネルを淡い鏡面にすることで、近くの公園や樹木、周辺の建物が柔らかく映り込み、周辺の風景に溶け込みます。また、壁面がいろいろな角度に向けられ、さまざまな風景を映し出します。
周辺の風景になじませるために、あえてアルミのようなメタリックな素材を使うのは、なかなか面白い発想だと思います。

妹島和世氏は新しい絵が生まれたらと期待して、このような外壁を作り出しました。

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アプローチしやすい美術館

すみだ北斎美術館は、緑町公園内のテニスコート跡地に建設されました。

周辺の下町市街地に建ち並ぶ建物のスケールと合わせるように、建物を大きな1棟ではなく、さまざまな大きさの建物を集めるように、外壁を切り込むようなスリットにより分割して、街並みと調和を図っています。

さまざまな大きさのボリュームに分割している様子は、1階平面図を見ると分かりやすいです。

建物を分割するスリットは四方から人々を迎え入れるアプローチ空間となっており、十字の外部通路により空間が結ばれて、どの方向から来ても入りやすくなっています。

スリットからは内部の様子が垣間見えるため視認性があり、周辺地域とのつながりを作り出しています。

このように場所によっては、ガラス張りとなっていて館内の様子がうかがえたり、建物の反対側の景色が見えたりします。いろんな角度から見てみると面白いですね。

浮世絵作品の保存・展示を考慮するため、建物全体としては閉じた建物ではありますが、このようにスリットを入れることで、地域に開いた美術館となっています。

また、このスリットは内部に光りを届ける役割を果たしています。

内部画像の2枚目は、上部から切り込みが入ったスリット部分の4階展望ラウンジとなりますが、ここからは東京スカイツリーを望む事が出来ます。
窓の外には、エキスパンドメタルという金網によって調光され、柔らかい光を内部に取り入れます。

建物全体に裏を作らず、周辺地域や公園と一体となった美術館。
どの方面からでもアクセスが可能で、訪れる人が気軽に立ち寄ることが出来ます。

すみだ北斎美術館は、新しい技術による葛飾北斎の作品の鑑賞だけでなく、このように建築物自体も見どころとなっています。

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建築概要

設計建築:妹島和世建築設計事務所
構造:佐々木睦朗構造計画研究所
設備:森村設計
監理:妹島和世建築設計事務所
施工建築:大林・東武谷内田建設共同企業体
電気:大栄・事業建設共同企業体
空調:浦安・沖山建設共同企業体
衛生:浦安工業
敷地面積1,254.14㎡
建築面積699.67㎡
延床面積3,278.87㎡
最高高さ21.920m
階数地下1階、地上4階、塔屋1階
構造鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
工期2014年7月~2016年4月
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ご利用案内・アクセス

開館時間9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日月曜日(祝日の場合はその翌日)
年末年始(12月29日~1月1日)
入館料常設展:大人 400円(320円)
    高・大学生、65歳以上 300円(240円)
    中学生以下 無料
    ※()内は団体料金
企画展:会期により変動
電話03-5777-8600
住所東京都墨田区亀沢2-7-2
アクセス都営地下鉄大江戸線 両国駅 A3出口より徒歩5分
JR総武線 両国駅 東口より徒歩9分
都営バス 都営両国駅前 徒歩5分
墨田区内循環バス すみだ北斎美術館前(津軽家上屋敷跡) すぐ

※2020年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。


参考元:

すみだ北斎美術館 公式サイト
・「新建築2017年1月号」,新建築社
著作権フリー作品「富嶽三十六景」
Mitsuri | 金属加工のWeb見積りプラットフォーム

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