「帰真園」とその中の「旧清水家住宅書院」は訪れて損はない場所

02.近代建築
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二子玉川駅から大型施設の二子玉川ライズを抜けた先にある「帰真園」(きしんえん)は、世田谷区立初の日本庭園であり自然豊かで趣のある庭園です。帰真園の中には「旧清水家住宅書院」があり、近代和風建築の特徴である床の間などを残した建物で、区登録有形文化財に登録されています。

帰真園の案内図

帰真園は池泉のある周遊式の日本庭園であり、石材は要所に配置されて池に向かって川のように水が流れ、味わいのある和の風景を作り出しています。旧清水家住宅書院は、黄金の襖や池が眺められる縁側など、見どころのある純和風な住宅です。

今回はそんな帰真園の風景と、旧清水家住宅書院の建築を紹介します。

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帰真園

帰真園の景色

2013年(平成25年)4月14日に開園したこの帰真園は、面積約5,800㎡の池泉周遊式の日本庭園となっています。自然の真の姿に帰り、その自然から日本文化の原点を学ぼうということから「帰真園」という名が付けられました。

帰真園の景色

近くを流れる多摩川の源流から二子玉川の地までをテーマとしており、多摩川の縮図を描いています。庭園内には約1,200トンの石材が置かれており、それらは伊豆や北関東などから集められています。

帰真園の中は万人のためのユニバーサルデザインを施しており、園路幅を広くしたり斜路を緩くしたりなど、車椅子の人達でも利用出来るよう、誰もが利用しやすいユニバーサルデザインが所々になされています。

帰真園の万人花筵

こちらは車椅子を利用したまま草花に触れられる万人花筵(ばんにんはなむしろ)という花壇です。斜路の折り返し地点にあり、地面が水平になっています。

帰真園の二子坂

こちらは二子坂(ふたこざか)。ここを登った先には富士見台が見えます。(画像では分かりにくいですが。。)そして富士見台からは、本物の富士山が眺められます。

帰真園の景色

多摩川の上流を意識して作られた石組みです。車椅子の人でも流れるところまで近寄ることが出来て、水に触れることが出来ます。

帰真園の万人席

こちらは万人席(ばんにんせき)。ここも地面が平らになっており誰もが利用出来ます。そして、茶室を思わせるような小さい入口があります。

帰真園の相生橋

下流の池に渡る相生橋(あいおいばし)。相生橋という名前は、男と女や、人間と自然、人間と動物など、支え合う共生の思いを込めて名付けられています。木製の床板や欄干が、周囲の緑と相まって穏やかな風景を作っています。

帰真園の時雨亭

こちらは時雨亭(しぐれてい)。雨の恵みを象徴しており傘のような形をしている東屋(あずまや。柱と屋根だけで作られた休憩所)です。

帰真園の時雨亭

傘の形は三角形の辺が盛り上がったような、やわらかな形をしており、骨組は三角形の梁に放射状に垂木が乗っかっています。この傘を、鉄骨の柱で支えています。

帰真園の池

時雨亭から旧清水家住宅書院を見た様子です。手前にある池に清水家の住宅や周囲の自然が映り込み、映える風景を作っています。

帰真園の池にある灯籠

園内に置かれている灯籠や景石のいくつかは、上野毛にある五島美術館から寄贈されたものとなります。池底に使われている砂利は、二子玉川で採取された玉川砂利を使用しています。

帰真園の帰真門

こちらは帰真門。黒く塗られた渋い意匠の門です。

帰真園の清水門

こちらは清水門。旧清水家住宅書院のすぐ近くにある門です。帰真門と外観の意匠を合わせています。

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旧清水家住宅書院

帰真園の旧清水家住宅書院の外観

帰真園は日本の文化の継承をコンセプトに作庭されたわけですが、その中のひとつとして、旧清水家住宅書院が置かれました。文化を継承するため、耐震補強もされています。

もともと、1910年(明治43年)頃に中根岸(現在の台東区)の清水組(現在の清水建設)の副社長宅に離れとして建築され、1919年(大正8年)には瀬田(二子玉川近く)に移築、1952年(昭和27年)には移築された場所が玉川病院となり構成施設として使われ、1979年(昭和54年)には病棟の増築に伴って一度解体されて保管され、2013年(平成25年)に帰真園にて復元されました。

復原工事は、清水建設が社会貢献事業として協力しています。また、設計・施工費用についても清水建設が負担しています。

帰真園の旧清水家住宅書院の平面図

清水家住宅の間取りは、11畳の書院の間と長5畳の次の間と縁側で構成された小規模な住宅です。なお、便所や倉庫、台所などは新築された部分となります。

帰真園の旧清水家住宅書院の縁側

縁側は池に面しており、池と庭園風景を眺められるようになっています。

帰真園の旧清水家住宅書院の書院の間

こちらは書院の間。床の間およびその左の付書院(つけしょいん)、床の間の右にある床脇と呼ばれるスペースにある金襖(きんぶすま)や天袋(てんぶくろ)は、記録写真から復元されたものとなります。金襖が輝かしく、書院の間を豪華に彩っています。

帰真園の旧清水家住宅書院の書院の間にある床の間

床框(とこかまち。床の間の段差部分の部材)は、黒漆(こくしつ)仕上げとなっており、黒光りしていて綺麗な床の間になっています。

帰真園の旧清水家住宅書院の書院の間にある付書院の板欄間

付書院の板欄間(らんま)には、桐の柾目板(まさめいた。木の中心部分を切り取った板であり、木目が真っ直ぐになっている貴重な板)に菊華流水の絵が描かれており、付書院を華やかにしています。

帰真園の旧清水家住宅書院の書院の間にある金襖

金襖には、葛(くず)と藤が描かれており、天袋の襖にはそれぞれ2枚づつの色紙に、萩や水鳥などの絵が描かれています。金襖は清水家住宅の一番の見どころとも言える豪勢な意匠です。

帰真園の旧清水家住宅書院の書院の間から外を見た様子

書院の間から池を見た様子。

帰真園の旧清水家住宅書院の次の間

こちらは次の間。この部屋にも付書院のようなものがあり、部屋の中を彩っています。

帰真園の旧清水家住宅書院の照明

各部屋にある照明は、記録写真を元に復元したものです。

帰真園の旧清水家住宅書院の火灯窓

特徴的な形をした開口部は火灯窓(かとうまど)と呼ばれ、書院の間にある床框と同じく黒漆仕上げであり、黒光りしています。

住宅の部材は約4割が失われており、その多くは梁や小屋組(屋根の中の部材)、瓦や建具であり、新しい部材が使われていますが、内装材については多く生き残っていたため、創建当時の姿を再現することが出来ています。

明治末から昭和初期の近代和風建築の特徴をよく表しており、歴史的な価値が評価され、2013年(平成25年)3月29日に世田谷区の登録有形文化財に登録されました。帰真園の日本庭園とともに、旧清水家住宅書院にて日本の文化に触れてみるのも良いかと思います。

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ご利用案内・アクセス

帰真園の開園日時

開園時間3~10月:9:00~17:00
11~2月:9:00~16:30
休園日火曜日(祝日の場合は開園)、年末年始
入園料無料
電話03-3700-2735(二子玉川公園ビジターセンター)
住所東京都世田谷区玉川1-16-1

旧清水家住宅書院の公開日時

公開時間3~10月:9:00~16:30
11~2月:9:00~16:00
公開日日曜日、祝日、第2月曜日
入館料無料
電話03-5432-2726
住所東京都世田谷区玉川1-16

帰真園・旧清水家住宅書院へのアクセス

アクセス<電車>
 東急大井町線 上野毛駅 徒歩8分
 東急田園都市線・大井町線 二子玉川駅 徒歩9分
<バス>
 二子玉川駅から東急バス(玉21) ライズ・プラザモール前 下車徒歩2分
 二子玉川駅から東急バス(玉11) 明神池前 下車徒歩5分
 東急線・多摩川駅から東急バス(玉11) 明神池前 下車徒歩5分
 目黒駅から東急バス(黒02) 玉川高校前 下車徒歩6分
 二子玉川駅から東急バス(黒02) 玉川高校前 下車徒歩6分

※2021年8月現在の情報です。お出かけの際は最新の情報をご確認下さい。

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