「米津玄師/Lemon」のMVロケ地である教会はどんなところ?

02.近代建築

米津玄師氏の代表曲である「Lemon」のMVでは、本人が神聖で静寂な雰囲気のある教会の講堂で歌っており、女性が華麗に踊っている印象的なMVとなっています。MVのロケ地として使われた教会は、早稲田奉仕園の「スコットホール」になります。

YoutubeのMV再生数は2021年現在で6億回を超えており、日本一再生されているMVです。また、シングル売上はCDとダウンロード合算で300万を超えており、ダウンロードランキングやカラオケランキングでは2年連続で年間1位を獲得するなど、様々な世代に親しまれた日本を代表する楽曲です。

ドラマ「アンナチュラル」の主題歌にもなっており、シリアスな内容のドラマとの雰囲気とよくマッチしています。

今回はそんなLemonのMVに出てくる教会「スコットホール」はどんな建築なのか、紹介していきたいと思います。

MVに使われた講堂

まずは教会の講堂で撮影された、米津玄師氏のLemonのMVをご覧下さい。

米津玄師 MV「Lemon」 – YouTube

このMVの撮影で使われたのは、スコットホールの講堂部分となります。

レンガ作りが特徴のこのスコットホールの講堂内で、LemonのMV撮影が行われました。
建物の設計は、アメリカ人建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏。山の上ホテルなどを設計した方です。

こちらは講堂内後方の座席です。MVとは椅子の並び方が少し違いますが、この辺りがハイヒールを履いた米津玄師氏が座っていた位置になります。

講堂の正面にある教壇(ステージ)です。教壇が高いのはヴォーリズ建築のようです。焦げ茶色の板が下部に張られており、全体的に落ち着いた雰囲気です。
舞台裏は、左右に通り抜けが出来るようになっています。

こちらは、講堂内後方の空間です。MVで女性が踊っていた場所になります。
壁に開いている長方形の穴には、アクリル板らしきものが張られていました。何かを飾っておくものでしょうか。
右の窓から差し込む光が薄暗い講堂内を照らし、神聖な雰囲気を醸し出しています。

教壇の横には巨大なパイプオルガンが置かれています。

講堂の窓は背が高く、周りをレンガで囲ったアーチ型となっており、教会らしいデザインです。
窓の下側の建具を持ち上げると上側の建具が自重で下がる、上げ下げ式になっています。(画像は、下側建具と上側建具がちょうど重なっている状態です。)

ちなみに講堂のレンガの目地は、断面が半円型であり「覆輪目地」と言われる化粧目地となっています。正面から見ると膨らんでいるように見えます。

この覆輪目地を施すには、熟練した職人にしか出来ないとても高い技術が必要とされます。

教壇からの風景です。こうして見ると、広々とした空間であることが分かります。画像右の白漆喰の壁には窓の形に施されたレンガがあり、シンメトリーになるよう作られています。

MVではあまり映っていないですが、天井はこのように木造の三角トラス構造となっています。

この三角トラスによって安定した構造となり、大空間な講堂を作り上げています。
また、このように1階から屋根部分まで吹抜けた空間は、良質な音響を生み出すそうです。

スコットホールの講堂は、木材と漆喰で作られた温もりと静寂を感じる場所となっています。

100年の歴史がある教会

スコットホールは、1918年に発表された早稲田奉仕園の事業に賛同したJ・E・スコット夫人によって、他界した夫の記念品として寄贈された教会です。

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏が設計原案を出し、早稲田大学の助教授をしていた今井兼次氏が設計を完成させ、同じ研究室で教授をしていた内藤多仲氏が施工管理を行い、施工は竹田米吉氏が担当しました。

ヴォーリズ氏は世界に多くの名建築を残している建築家です。また、内藤多仲氏は東京タワーなどを設計しており、耐震構造の父と呼ばれていました。今井兼次氏はクリスチャンの建築家であり、多くの教会建築を手がけています。竹田米吉氏は、レンガ積みの名手と呼ばれていました。

そんな著名な人達の技術が集結し、スコットホールという歴史に残る建築が1922年に完成しました。

1990年には東京都より「歴史的建造物の景観意匠保存」の指定を受けて、多くの人の寄付によって、保存のための大規模修繕が行われました。また、1999年には「東京都選定歴史的建造物」を受賞しています。
このようにスコットホールの美しい建築は、たくさんの人々に愛され長年保存されてきました。

完成した当時から、キリスト教の礼拝の他にも集会や結婚式、コンサート、MVや雑誌の撮影などにも使われ、親しまれている場となっています。

建物の外観

スコットホールの外観は、赤レンガ組積造が特徴の建物です。

どの窓も上部はアーチ型となっているように見えますが、ほとんどは長方形であり、上部のアーチ部分は白い漆喰が施されています。洋風建築ならではの窓の形をしています。

こちらは、講堂の正面入口です。上部にSの字が描かれたレリーフがありますが、戦時中は塗りつぶされていたそうです。敵国であるアメリカの文字であるためです。
大きさはあるものの、洋風に仕上げているせいか全体的にメルヘンチックな感じに見えます。

こちらは、裏側から見たスコットホールです。半地下部分以外は窓の形が統一されています。
レンガは、1段ごとに縦と横に向きを変えて並べているイギリス積みとなっています。

1923年に発生した関東大震災や、1945年の東京大空襲では炎が間近に迫ってきましたが、耐熱性や耐久性のあるレンガで作られているため、塔屋の一部が崩落した以外はほぼ竣工当時のままの形が保たれています。

講堂以外の内観

スコットホール講堂以外の部分も少し紹介いたします。

1F平面図

2F平面図

塔屋平面図

塔屋は現在使用されていませんが、学生サークル活動として使われていた時期は、学生や留学生が住んでいたことがありました。

こちらは半地下になりますが、部屋の入口にアーチ型に組まれたレンガがありました。

廊下にある照明もお洒落に飾られています。
また天井に注目していただくと、隅が丸みを帯びておりやわらかさを感じる空間となっています。

階段には赤い絨毯が敷かれ、壁の下部に施された板の色と相まっており、厳格で落ち着きのあるデザインになっています。

こちらが会議室になります。扉や家具なども、西洋建築に合ったデザインです。

スコットホールは「Lemon」の世界観とマッチしており、歴史のある素晴らしい建築であり、実際にお目にかかると長年愛されてきた理由が分かります。

建築概要

設計新築時:ヴォーリズ設計事務所、内藤多仲、今井兼次
大規模修繕:一粒社ヴォーリズ建築事務所東京事務所
施工新築時施工:内藤多仲、竹田米吉店
延床面積972㎡
階数地上2階、地下1階
構造レンガ造、一部木造
工期新築時:1922年
大規模修繕:2010年11月

ご利用案内・アクセス

年に1回、一般公開日が企画されています。詳細は公式サイトから。

電話03-3205-5411
住所東京都新宿区西早稲田2-3-1早稲田奉仕園内
アクセス東京メトロ東西線 早稲田駅 徒歩6分
東京メトロ副都心線 西早稲田駅 徒歩9分


参考元:

公益財団法人 早稲田奉仕園
早稲田奉仕園 スコットホール | 建築作品集 | 株式会社佐藤秀

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