国立新美術館の向かい側にある、美術館のもうひとつの見どころである「国立新美術館 別館」は、美術館が建設される前に建っていた歩兵第三連隊兵舎のほんの一部が保存されている建物になります。
二・二六事件に深く関わるこの建物は、アールデコ調のデザインが取り入れられており、近代建築の中でも注目されていました。
今回はそんな国立新美術館 別館の建築を紹介します。
歩兵第三連隊兵舎だった頃の姿
国立新美術館があった位置には、1928年(昭和3年)に歩兵第三連隊兵舎が建設されました。この建物は、1923年に発生した関東大震災からの復興の象徴として注目されていました。
旧陸軍の建物としては最初の鉄筋コンクリート造であり、外壁にはアールデコ調のデザインを取り入れたモダンな外観で、代表的な近代建築でした。
兵舎は「日」の字型平面の建物であり、真ん中の「一」と周囲の「口」が接する場所に浴室や階段室などのコア機能が配置され、それ以外の部分は居住空間となり合理的に配置されています。
国立新美術館の中に兵舎の建築模型が展示されています。
この兵舎は戦後に在日米軍に接収されましたが、1962年(昭和37年)に東京大学生産技術研究所(一部、物性研究所)として2001年(平成13年)まで使われていました。
現在は国立新美術館別館として保存
国立新美術館の建設に伴って、兵舎および研究所だった建物は解体されることになりましたが、歴史的価値のある建物のため、一部が保存される運びになりました。内部が改装され、現在は国立新美術館別館として活用されています。
外壁と入口が一部保存され、裏側は美術館のガラス張りの外観と合わせるように、別館もガラス張りに仕上げています。
こうして見ると、旧兵舎の建物は結構な建築面積があったことが分かります。
こちらは旧兵舎の入口。アールデコ調のデザインが施されています。
樹木で少し隠れてしまいましたが、入口上部はこんな感じに盛り上がったようなデザインになっています。
別館を裏側から見ると、完全にガラス張りの建物といった様子です。裏側にはB1Fの展示コーナーがあり、前述で紹介した旧兵舎に関する写真や図面などの資料が展示されています。ちなみに1Fはアートライブラリー、2Fは事務室、3Fは多目的スペースとして使われています。
国立新美術館の本館についても別記事で紹介していますので、是非合わせてご覧下さい。
建築概要
歩兵第三連隊兵舎
設計 | 第一師団経済部 |
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施工 | 松村組 他 |
建築面積 | 8,746㎡ |
延床面積 | 27,782㎡ |
階数 | 地上3階、地下1階 |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
竣工 | 1928年8月 |
国立新美術館 別館
設計 | 黒川紀章、日本設計 共同体 |
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施工 | 鹿島建設 |
建築面積 | 369.66㎡ |
延床面積 | 1,262.78㎡ |
階数 | 地上3階、地下1階 |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
竣工 | 2006年5月 |
B1F展示コーナーのご利用案内・アクセス
開館時間 | 11:00~18:00 |
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休館日 | 毎週火、土、日、祝、年末年始 |
入館料 | 無料 |
電話 | 03-5777-8600 |
住所 | 東京都港区六本木7-22-2 |
アクセス | 東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6番出口直結 都営地下鉄大江戸線 六本木駅 7番出口より徒歩4分 東京メトロ日比谷線 六本木駅 4a出口より徒歩5分 |
※2021年9月現在の情報です。お出かけの際は最新情報をご確認下さい。