「豊洲シビックセンター」は現在の里山をイメージした高層ビル

01.現代建築
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ゆりかもめの豊洲駅のすぐ近くに位置する、屋上部分が斜めに開けた特徴的な形の高層ビル「豊洲シビックセンター」は、出張所、図書館、各種ホール、研修室、和室、茶室、音楽練習室、ギャラリーなど江東区民のための様々な施設が入った複合ビルとなっています。

現在、東京オリンピックの競技施設や築地市場の移転、超高層マンションやオフィスビル、商業施設などの大規模な開発が進められており、急速な成長を遂げています。そんな中、急激な人口増加が問題となっており、それに対応するため、住民のための機能を持たせた大規模施設が整備され、このようなシビックセンターが建設されました。

外観から見た通り緑がふんだんに施されており環境に優しく、堅苦しい感じも全く無いため気軽に訪れやすい施設となっています。

今回はそんな豊洲シビックセンターの建築を紹介します。

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里山をイメージした外観

外観には立体的な緑地を作り出し、また木材を多用に使用しています。周辺はアルミカーテンウォールで透明性が高く、現代の里山というコンセプトのもとに作られました。

北東西面にはカーテンウォール、南面には壁面緑化がされており、屋上テラスに加えて緑化を意識した作りになっています。

外部からはビルを切り取ったような形をしていますが、実際には階ごとにセットバックした構造となり、その上に斜めの木製ルーバーを設置しています。ちなみに、12階の屋上は一般開放していないそうです。

各階の屋上テラスはこのように緑豊かな空間となっており、6mほどの樹木を植栽して里山の棚田をイメージしています。図書館から、この屋上テラスに出る事が出来ます。

豊洲の街並みを眺めながら、緑豊かな場所で風を感じ、ゆっくり本を読むのも良いでしょう。

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暖かみのある内装

現在の里山というコンセプトに合わせるように、内装は木材を多用しています。バックマリオン(カーテンウォールの内部側にあるサッシの方立て)や、開口部などに唐松の積層材を使用しています。

こちらはエレベーターホール。エレベーターの開口枠に木材を使用することによって、やわらかい空間を作り出しています。

豊洲シビックセンターには300席の音楽ホールがあるのですが、平面形状はわずかに台形のような形をしており、ホワイエは斜めの壁に囲まれた形状となっています。台形にする事によって、ホール内のフラッターエコー(不快な音響)を軽減し、音響の良いホールとしています。

こちらが音楽ホールのホワイエ部分です。天井の間接照明のせいか、斜めの壁に囲まれた不思議な空間に見えます。

こちらは区民広場。休憩室のようなスペースとなっています。すぐ横はテラスとなっていて、ゆったりと休憩出来る場所です。

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構造について

豊洲は埋め立てによって出来た軟弱な地盤であり、また建物は、傾斜やセットバックした鉄骨構造、ガラス張りによる立体的な形、ホールや図書館などの構造が異なる施設、さらに、ゆりかもめが隣接した敷地など、施工の難易度は高く工期も短かったため、非常に厳しい工事になったそうです。
そこで、コンピューターネットワークでの情報共有、BIM(Building Information Modeling)といった工事管理のシステムなどを駆使して、厳しい条件の中でもなんとか品質を確保しています。

1階の床を先に作って頑丈に仕上げ、そこから地上と地下の工事を並行して進めることによって、工期の短縮を図りました。

また、敷地の全面道路にはゆりかもめの豊洲駅がすぐ近くに隣接しており、工事の際に豊洲駅に影響が出ないよう慎重に行われたようです。

ゆりかもめ豊洲駅側の様子です。このように目と鼻の先に駅があります。

この建物は制振構造であり、粘性の制振壁や座屈拘束ブレースといった制振設備を使って、地震発生時に建物が崩壊しないよう揺れた際に加わる応力を吸収します。座屈拘束ブレースは、鉄骨造でよく見る斜めに配置されている構造材となり、外部から見るとブレースが入っているのが分かります。

8~12階の北側外部は壁面がセットバックしており、その上に傾斜した4面ボックス柱が構成されています。ちなみに、建物を構成している4面ボックス柱の中には、高強度コンクリートを充填するCFT柱を使用しています。

テラスから見上げた鉄骨構造の様子です。見た目からしても施工の難しさが分かります。

斜めにかけられた木製ルーバーの縦ラインは、カーテンウォールのバックマリオンと間隔を合わせて作られているので、構造的にしっかりしており、見た目もきれいです。

高い管理能力が要求され、厳しい条件の中で作られた豊洲シビックセンター。しかし、環境に優しく気軽に訪れる事の出来る施設であり、建物構造やテラスの緑を楽しみながら過ごせられる建築です。

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建築概要

設計日建設計
施工鴻池・多田・増 JV
敷地面積3,300㎡
建築面積1,945㎡
延床面積15,537㎡
高さ69m
階数地上12階、地下1階
構造鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
工期2012年12月〜2015年6月
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ご利用案内・アクセス

開館時間9:00~22:00
休館日第2、4月曜日(祝日の場合は開館)
年末年始(12/29~1/3)
電話03-3536-5061
住所東京都江東区豊洲2-2-18
アクセス東京メトロ有楽町線 豊洲駅 7番出口より徒歩1分
ゆりかもめ 豊洲駅 改札フロア直結


参考元:

豊洲文化センター | 公益財団法人 江東区文化コミュニティ財団
立体的な緑地空間や音楽ホールをもつ複合ビルの施工

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