「東京国立博物館 表慶館」建築の見どころ

02.近代建築
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上野公園にある、多くの重要文化財が展示された「東京国立博物館」。その中の「表慶館」は、後の大正天皇となる皇太子のご成婚を記念して作られ、1909年に開館しました。慶び(よろこび)を表すと書いて表慶館という名が付けられたこの建物は、ご成婚の記念にふさわしい建物となっています。

東京国立博物館の中では最も古い建物であり、また、建設費用は国民が奉納して約40万(現在の価値に換算すると約20億円)もの資金が集まり建てられました。
国民に親しまれた表慶館は、歴史深い建築の価値が評価され、1978年に重要文化財に指定されました。

設計は片山東熊(かたやま とうくま)氏。東宮御所(現在は迎賓館)などを手がけた建築家であり、鹿鳴館などを設計したジョサイア・コンドル氏の弟子でもあります。
表慶館は建物自体が美術品となるよう作られたこともあり、様々な装飾で彩られています。

今回はそんな東京国立博物館 表慶館の建築を紹介します。

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美術作品のような外観

外観は中央に大ドーム、左右に小ドームの、3つのドーム屋根をもったネオ・バロック様式のシンメトリーなデザインとなります。ネオ・バロック様式とは、17世紀頃にヨーロッパで盛んになった建築様式が、19世紀に復興したものです。

東京国立博物館表慶館外観

外壁は花崗岩の石張りとなっており、ふんだんに装飾が施され、明治時代を代表する西洋建築となります。内部は鉄骨レンガ造りで、外周を石張りにしているため壁厚があり、最も厚い箇所では実に186cmもの壁厚があります。

工事開始後、途中で部屋の付設などの計画の追加があり、最初の計画はI型平面だったものが、最終的には現在の十字型平面となりました。最終的な計画がまとまったのが、工事が始まった5年後の事だったようです。そんな事もあり、7年の歳月をかけて工事が行われ、こだわり抜かれた建築となりました。

2階の外壁部分には、ピラスターが付けられています。ピラスターとは付柱のことで、装飾的な役割を果たします。

イオニア式のオーダー(古代ギリシャの建築様式)を用いられていることもあり、左右の小ドーム前の外壁は、ギリシャの建築を思い起こさせるデザインとなっています。

また、外壁の上層部の欄間部分には、製図用具や武器、掃除道具などをモチーフにした漆喰のレリーフがあり、見る者を楽しませてくれます。

入口の両サイドには、表慶館の守り神のように2頭のライオンが居座っており、片方が口を閉じ、もう片方が口を開いています。これは、「阿吽」を意味しているものとなります。
入口にライオン像を置くことで、表慶館の建築の荘厳さがより引き立って見えます。

少し見ずらいですが、中央のドーム手前にある聖火台のような装飾にも、2頭のライオンがいます。

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芸術的な装飾あふれる内観

エントランスは、床に十六稜の星型のモザイクタイルが彩られています。

この床には7色のモザイクタイルが使われており、フランス産の大理石を使用しています。

そしてエントランスを見上げると、1階からドーム天井まで吹き抜けとなっており、自然光が差し込みます。

東京国立博物館表慶館エントランス

2階のギャラリーに、イオニア式オーダーの柱が規則的に並び、ドーム天井内部には絵画が描かれています。

床や柱、ドーム天井の他、様々な箇所に装飾が施されており、壮麗なエントランスの空間を造り出しています。

こちらは2階のギャラリー部分から見た風景です。
2階は木製の床板になっているのですが、通路が円形になっているため、それぞれの板の大きさを調整するのが難しそうに見えます。

ドーム天井の絵は漆喰のレリーフに見えますが、楽器などをモチーフにして陰影をつけて立体的に描かれています。絵師の匠の技が光ります。

左右の小ドーム内部は階段室となっています。

手すりは真鍮(しんちゅう)製で、黒い支柱は鉄製であり、曲線のなめらかなデザインによって高級感が出ています。アールヌーボー(花や植物を基調としたデザイン)を思い起こさせる手すりと支柱です。
また、ここの床にも中央ドームと同じく、モザイクタイルが敷き詰められています。

小ドームを見上げると、真っ白な漆喰の装飾が見られます。

こちらは展示室です。広々とした落ち着いた空間になっているので、ゆっくりと展示を楽しむ事が出来ます。

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平成に修繕が行われた

2001年に雨漏り対策の工事、そして、2005~2006年にドーム屋根外装の修繕と、内部壁画の塗り替え工事が行われました。

ドーム屋根の外装には、下地となる野地板の交換から、表面の緑青の銅版貼り替えがなされました。銅板貼り替え後、修繕前の緑青に色を似せて塗装されており、塗装直後は光沢があれど、年数が経過していくとともに自然な緑青になっていく、三菱金属工業が開発したKODAIと呼ばれる技法が使われています。

現在の日本技術の活用により、当時の雰囲気が再現されました。
明るくなり過ぎず、少し渋みのある色になっている事で、建物の威厳さが保たれているように感じます。

内部の壁面についても、調査して創建当時の色合いを再現させています。

中央ドーム天井の絵画についても、ひび割れが進んでいたため修復が行われました。
高い技術で描かれた絵だけに、見るからに修復が大変そうな場所です。

屋根や壁の修復の他に、鉄骨レンガ組積造りである建物に損傷を与えないよう、エレベーターや多目的トイレを新設してバリアフリー対策を施し、足の不自由な方や高齢者でも展示を楽しめるよう改修されています。

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関東大震災に耐えた表慶館

表慶館の建設は当初4年を計画していましたが、7年もの期間を費やして工事されました。
なぜここまで工期が延びたかというと、前述でも記載した通り計画が追加されたことや、地盤が軟弱なため基礎工事に期間を要したことなど、様々な原因があります。

しかし、基礎工事を入念に実施した甲斐もあり、1923年の関東大震災では、東京国立博物館の敷地内にあった表慶館以外の建物が甚大な被害を受けた中、表慶館はほとんど被害がなかったようです。他の建物が復興される15年間は、表慶館が唯一、展示会を実施することが出来ていました。
被害が少なかった理由は、基礎工事を入念に行っただけでなく、鉄骨を使った頑丈な構造であった事、また、揺れの方向が建物の長手方向であった事などが考えられています。

設計者である片山東熊氏は、建築物は芸術でなければならないという考えを持っていました。しかし、この考え方は明治・大正当時の世間の考え方とはズレが生じており、東宮御所の建設では明治天皇から贅沢過ぎるといった指摘をされたエピソードがあります。

現在の令和の時代では、建築の素晴らしいデザインを絶賛する人から、デザインに重視し過ぎて使いやすさをないがしろにするのは良くないという考え方の人まで様々ですが、この表慶館は建物自体が美術品という考え方で作られているだけあり、美術館にふさわしいデザインの建物であると思います。

東京国立博物館に訪れた際には、表慶館もぜひ鑑賞していただく事をおすすめします。

別記事で、東京国立博物館の表慶館以外も紹介していますので、是非こちらもご覧下さい。

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建築概要

設計片山東熊
延床面積2,049.4㎡
階数地上2階
構造鉄骨レンガ組積造
工期1901年8月〜1908年10月
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ご利用案内・アクセス

※表慶館は特別展・イベント開催時を除き休館しています。

開館時間9:30~17:00(入館は16:30まで)
無料観覧日国際博物館の日(5月18日)※月曜の場合は翌日
敬老の日(9月第3月曜日)
文化の日(11月3日)
休館日月曜日(祝日の場合は翌平日に休館)、年末年始
その他休館あり。詳細は公式サイトをご覧下さい。
入館料大人   :1,000円
大学生  :500円
高学生以下:無料
※特別展の場合は別料金となります。詳細は公式サイトをご覧下さい。
電話利用案内や展示・催し物に関するお問い合わせ:050-5541-8600
その他のお問い合わせ:03-3822-1111
住所東京都台東区上野公園13-9
アクセスJR線 上野駅 公園口より徒歩10分
JR線 鶯谷駅 南口より徒歩10分
東京メトロ銀座線・日比谷線 上野駅 徒歩15分
東京メトロ千代田線 根津駅 徒歩15分
京成電鉄 京成上野駅 徒歩15分

※2021年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。

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参考元:

東京国立博物館 – トーハク
東京国立博物館 表慶館 | 都市の記憶~歴史を継承する建物~ | 特集記事 | オフィス物件数最大級の三幸エステート
安井建築設計事務所
港区ゆかりの人物データベースサイト・人物詳細ページ (片山東熊)

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