砧公園の一角に位置する「世田谷美術館」は、レストラン、カフェ、ミュージアムショップなどの施設を備えており、1986年3月30日に開館しました。
世田谷区には著名な芸術家が多く、その人たちの作品を展示しています。
設計を手がけたのは内井昭蔵氏。公園の自然環境を生かしたデザインとしています。
今回はそんな自然豊かな世田谷美術館を紹介します。
公園の自然に溶け込む建物
この美術館の設計コンセプトは公園美術館
。公園でしか出来ない形態を追求したそうです。また、芸術は心の健康を維持するものという考え方が持たれ、美術館は作られました。
建物を公園内の木より高くならないようにし、自然を壊さないよう溶け込むように計画されています。
設計者である内井昭蔵氏は、健康な建築
という思想のもと、自然と共存し、人々の健康を大切にしながら、設計に取り組んでいます。
日本のみならず海外でも高い評価を得た、桜台コートビレジや国際日本文化研究センター、大分市美術館など、自然の中の一角に位置した作品を多く手がけています。世田谷美術館も例外ではありません。
こちらは世田谷美術館の全体模型。砧公園の自然の中に立地している美術館です。
静寂な遺跡のような外観
竣工当時、屋根は緑色だったそうです。緑青銅板を使っており、経年劣化によって緑青が剥がれ、現在の赤色屋根に変化しました。
建物が大きな塊になることを避けるため、いくつかに分割され、渡り廊下でつないでいます。そうすることで、より自然と触れあえるようにしています。
外壁に、ショットブラストが施された穴あきタイルが使われています。ショットブラストとは、細かい砂や鋼製、鋳鉄製の小球(ショット)などを表面に打ち当てて細かな凹みを作り、味のある仕上にする加工法です。
外壁の下部分は花崗岩が使われており、縦目地を入れて、前後にずらして貼っています。
上部分の穴あきタイルと、下部分の花崗岩タイル共に、外壁に凹凸を付けて変化を持たせて陰影を付けることで、人工的な感じをなるべく無くしているように見えます。
また、逆三角形の構造体が使われているパーゴラは、建物と公園との中間にあり、公園から建物へ違和感なく接続されています。
全体的にアール・デコを思い起こさせる幾何学模様のデザインを施しており、まるで遺跡のような外観です。公園の自然と相まって、より静寂な雰囲気を形成しています。
開放的なロビー
入口を入ると、以下のような開放的なロビーになります。
ロビーの天井は、ヴォールト天井といわれる、アーチ型の天井となっています。
柱が無く、天井がアーチ型のため、開放的で大空間なロビーが形成されています。更に、天井の証明に煌々と照らされ、まるで晴れた空の下にいるような感覚になります。
また、ロビーの階段はトラバーチンという石材が使われています。トラバーチンとは、温泉、鉱泉、地下水中で生じた石灰質の化学沈殿岩であり、壁、床、天井などによく使われる石材です。
壁に貼られたドアのような木材プレートのデザインと、階段のデザインが相まって、西洋的で神聖な空間を作り出しています。
また、建物外部のパーゴラに用いられた逆三角形の装飾ですが、建物内部にも装飾が所々に施されています。
この遺跡にありそうな逆三角形の装飾のせいか、歩いていると重要な空間へと導かれるような感覚になります。
水の音が心地よいオープンカフェ
建物中央の下がった中庭部分は、オープンカフェとなっています。
オープンカフェの横には池が設置されており、その池には、これまた特徴的な滝があります。水が流れる様子をそのまま表現しているようなデザインです。
池の中の滝や、石版オブジェにてカフェに訪れた人々を楽しませてくれます。
滝の流れる音を聞きながら、オープンカフェで優雅なひとときを過ごせることが出来ます。
美術館で鑑賞した後は、オープンカフェでくつろいではいかがでしょうか。
公園では樹木と触れ合い、中庭では水と触れ合う。汚れた心を浄化してくれそうな美術館です。
建築概要
設計 | 建築:内井昭蔵建築設計事務所 構造:松井源吾 |
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開館 | 1986年3月30日 |
竣工 | 1985年 |
延床面積 | 8,223㎡ |
建築面積 | 4,882㎡ |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
階数 | 地下1階、地上2階 |
ご利用案内・アクセス
開館時間 | 10:00~18:00(入場は17:30まで) |
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休館日 | 月曜日(祝日の場合はその翌日) 年末年始(12月29日〜1月3日) ※展示替えの期間中は閉館 |
観覧料 | <企画展> 内容によって料金が異なります。詳しくは世田谷美術館の公式サイトをご覧下さい。 <ミュージアム コレクション> 一般 : 200円(160円) 65歳以上 : 100円(80円) 大・高校生: 150円(120円) 小・中学生: 100円(80円) ※()内は団体料金(20名以上。事前連絡が必要。) ※小・中学生は、土、日、祝、夏休み期間は無料。 |
電話 | 03-3415-6011 |
住所 | 東京都世田谷区砧公園1-2 |
アクセス | <電車> 東急田園都市線 用賀駅 徒歩17分 <バス> 東急田園都市線 用賀駅から 美術館行バス「美術館」下車 徒歩3分 小田急線 成城学園前駅から 渋谷駅行バス「砧町」下車 徒歩10分 小田急線 千歳船橋駅から 田園調布駅行バス「美術館入口」下車 徒歩5分 東急東横線 田園調布駅から 千歳船橋行バス「美術館入口」下車 徒歩5分 |
※2020年4月現在の情報です。最新の情報は世田谷美術館の公式サイトでご確認下さい。
参考元:
・Daily Scenery|建築(個)とまち(総体)について発信
・nippon.com | 日本情報多言語発信サイト
・建材ダイジェスト|建材専門ウェブメディア
・Wikipedia