渋谷にある狭い敷地に、美術館や劇場、映画館やレストランなどが収められた複合施設「Bunkamura」は魅力的な内装となっており、訪れた人を癒やし、魅了する建築となっています。
デザインはフランス人建築家・ジャン・ミシェル・ヴィルモット。ルーブル美術館やオルセー美術館(改装)などを手がける世界的建築家です。建築設計は、石本建築事務所が担当しています。
Bunkamuraは、隣接する東急百貨店本店土地の開発工事のため、2023年4月10日より長期休館となりますが、施設内にあるオーチャードホールは日曜・祝日を中心に営業が継続されます。休館中は施設の補修や設備の更新、新築される施設との一体化に向けた改修工事が行われます。
そのため、長期休館となる前に一見しておきたいと思い訪れました。今回はそんなBunkamuraの建築を紹介します。
どんな施設があるのか
Bunkamuraは様々な機能が入った複合施設ですが、主にどんな施設があるのかを紹介します。
フロアマップを見ていただくと、L字型の建物の中止にスパイン広場という吹抜けのある空間があり、このスパイン広場を中心に様々な施設にアクセスする形になります。
ザ・ミュージアム
地下1階にあるザ・ミュージアムは展示室となっており、近代の美術品を中心に展示されています。
床面積837㎡、天井高4mの無柱の広々とした展示室であり、壁面パネルは可動式となっているため、展示内容によって自由に構成が出来るようになっています。
シアターコクーン
1階にあるシアターコクーンは舞台劇場となっており、演劇やコンサートなどが行われます。
客席数が747席ありながら、舞台から1階最後尾までの距離が24mというコンパクトな劇場となっています。3階まであるサイドバルコニーから舞台までの距離も短く、舞台と観客との一体感が強い劇場です。
舞台と客席の一部が可動式となっているため、舞台内容によって自由に構成が出来るようになっています。
オーチャードホール
3階にあるオーチャードホールは、コンサートやオペラなどが行われる音楽ホールです。
客席数2150席、天井高約20mのシューボックス型ホールであり、国内最大規模となっています。両側の垂直な壁と平らな天井によって、音が繰り返し反射することで、より音楽の世界観に溶け込めるような音を作り出します。シューボックス型とは、長方形の靴箱型をしている音響に優れた空間です。
ステージは三重構造の可動式音響シェルターとなっており、パフォーマンス内容によって自由に構成が出来るようになっています。
ル・シネマ
6階にあるル・シネマは映画館であり、Bunkamura内には2つ(ル・シネマ1、ル・シネマ2)入っています。
最新のデジタル映写システムが完備されたミニシアターとなっています。
外観
正面(南口)エントランスは、入口の両側に円柱のような形をした曲線壁を、シンメトリーに配置したデザインが特徴です。シンメトリーなデザインはこの正面入口だけでなく、内観の吹抜けについてもシンメトリーな空間になっています。(内観については後術。)
緩やかな階段を降りていく入口は、Bunkamuraの世界観に徐々に入っていくような感覚になります。
こちらは西側から見た様子。正面入口もそうですが、平面計画に円形を所々に取り入れているので、柔らかい感じの外観となっています。
こちらは松濤(北口)エントランス。ここは円柱形を横にしてデザインされており、柔らかさや入りやすさがあります。ちなみに、正面エントランスは1階なのですが、松濤エントランスは3階になっているので、渋谷の坂勾配の大きさが感じられます。
内観
内観は、石材や金属などの素材が輝き、美しさのある内装となっています。吹抜けからの光や、絶妙な光加減の照明が、魅力的な空間を作り出しています。
柱にはオシャレにデザインされた照明があり、訪れた者を楽しませてくれます。
建物中央部の吹抜けは、地下1階から一番上まで空間スパインを設けおり、屋根はありません。スパイン(Spine)とは英語で背骨という意味であり、このBunkamuraの建築の重要な部分となります。
周辺の展示室や劇場などの各施設からすぐにアプローチできる位置にあり、外気の心地よさが感じられます。吹抜けの形は、円柱形のエレベーターシャフトや、半円型に引っ込んだバルコニーが、堅苦しさのない空間を作り出し、シンメトリーな形となっています。
吹抜けの一番下は、レストラン「ドゥ マゴ パリ」のテラス席となっており、水面やオブジェ、観葉植物がたくさん置かれて、癒やしの空間です。
渋谷の中心部の近くにあるとは思えないような、静けさのある空間です。
館内は、黒い艶のある石床に、煌びやかなタイルが使われた壁、そしてオブジェや照明などが綺麗な空間を作り出しています。
各素材の特色を活かして、時間の経過とともに魅力が増すよう作られたようです。芸術文化の施設に相応しい、魅力的なデザインが施された建築です。
長期休館するBunkamura
Bunkamuraは2023年4月10日より長期休館に入り、隣接する東急百貨店本店土地の開発工事が行われ、それに伴ってBunkamuraも改修工事が行われます。百貨店とBunkamuraが一体となった開発計画になります。
開発後のBunkamuraがどんな様相になるのか、そして隣接の施設がどのような建物になるのか、工事終了後もこの場所を訪れたいと思っています。
建築概要
設計 | 石本建築事務所、東急設計コンサルタント、MIDI総合設計研究所、ヴィルモット・ジャポン JV |
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施工 | 東急建設 |
延床面積 | 31,994㎡ |
階数 | 地上7階、地下2階 |
構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
竣工 | 1989年6月 |
アクセス
電話 | 03-3477-9111 |
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住所 | 東京都渋谷区道玄坂2-24-1 |
アクセス | 各線 渋谷駅 徒歩7分 |
参考元:
・ザ・ミュージアム | Bunkamura
・渋谷 東急百貨店本店、建て替えでBunkamuraと一体化 – Impress Watch
・Bunkamura | 石本建築事務所
・ヴィルモットデザイン|UN éTé EN FÊTE アンネテ・オン・フェット Bunkamura 2014