「刀剣博物館」は硬さと柔らかさが共存する博物館

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1.現代建築物の観光

池泉が美しい回遊式の庭園が残る旧安田庭園に建つ「刀剣博物館」は、厳格そうな施設名ながらも気軽に訪れる事が出来る博物館です。

刀剣博物館はもともと、1968年に代々木に開館し、その後2017年に両国へ移転しています。
大名屋敷であった旧安田庭園に、我が国の美術文化である日本刀の博物館が置かれ、日本の文化に浸れる所となっています。

博物館の設計は、テレビ朝日、幕張メッセなどを手がけた名のある建築家・槇文彦です。

今回はそんな刀剣博物館の建築を紹介します。

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旧安田庭園の一角にある庭園博物館

刀剣博物館は、池泉回遊式の庭園が残る旧安田庭園の一角に建ち、庭園と共に楽しめる庭園博物館として計画されました。

建物は、庭園に向かって張り出した円筒部と、その両側の翼部から構成され、頂部にはヴォールト屋根が載り、高さを抑えて庭園との調和を図っているそうです。
ヴォールト屋根とは、かまぼこ型の形状をした曲面屋根です。
円筒部の外壁とヴォールト屋根によって、建物に柔らかさを感じます。

博物館があった場所には、かつて両国公会堂が建っていました。公会堂は関東大震災の復興を象徴する建築であり、円形のドームが載せられた美しい外観であったため、人々に親しまれてきました。

博物館に、当時の両国公会堂の模型が展示されています。

建物の形状が刀剣博物館とよく似ていますね。博物館は、両国公会堂があった頃の記憶から、建物の形状を似せて曲面屋根を置くという、公会堂と同様の佇まいを継承しています。

こちらは庭園とは反対側から見た、正面入口側の博物館です。
入口まわりのシャープなステンレス外壁に、コンクリート打ち放しとなっているため、庭園側から見える姿とは逆に、厳格で硬質なファサード(前面)です。

打ち放しコンクリートの外壁を施工する際、翼部と円筒部でそれぞれ違う素材の型枠を用いています。

こちらは円筒部の外壁で、スギ板本実型枠を用いています。

こちらは翼部の外壁で、化粧合板型枠を用いています。

このように博物館外観には、場所ごとに質感と陰影に変化を持たせています。

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柔らかい雰囲気のある内観

1階は、ミュージアムショップ、講堂、カフェなど、気軽に立ち寄れるパブリックスペースを配置し、 旧安田庭園散策の休憩所としての役割を持たせています。
2階は、博物館の運営および日本刀の審査や展示の企画を行うための、管理機能としての役割を持たせた諸室を配しています。
3階は、この博物館のメインともなる日本刀の展示室と、旧安田庭園を見渡せる屋上庭園があります。

エントランスを入ると、このようなオシャレな雰囲気のあるロビーが見えます。

円形の床部分は現場テラゾー、天井は優雅に円形状に布を設えた間接照明です。
現場テラゾーとは、砕石とセメントを混ぜたものを塗り付け、硬化後に表面を研磨する工法であり、高級感を出します。

1階の庭園に面する部分には、カフェと講堂が置かれています。

こちらはカフェですが、デザイン壁によって庭園に向かって開放的になり、明るく入りやすい雰囲気となっています。

デザイン壁には、真上からの力(軸力)のみを負担し、横からの力(せん断力)や曲げの力(曲げモーメント)を負担しないので、柱や梁の出っ張りが無い壁式コンクリート構造でありながら、開放的な空間を実現しています。

階段にも、特徴的なデザインがなされています。

階段の手すり壁は、ステンレスのビーズブラスト仕上げにしています。
ビーズブラストとは、機械を使って微細なビーズを資材に衝突させ、曇りガラスのような表面に仕上げることです。

また、丸型間接照明や、メタルスタッコの壁面も施されています。
メタルスタッコとは、部分的にメタリックな光沢をもつコンクリート調の壁です。

屋上庭園は、休憩・展望スペースとして開放されています。

この屋上庭園からは、旧安田庭園、そして両国国技館を眺める事が出来ます。

この旧安田庭園も展示物の一つであるかのように、両国国技館とともに絵になります。

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日本刀に集中出来るよう設計された展示室

刀剣博物館のメインとなるのは、3階の日本刀の展示室です。

天井上部には照明を付けず、展示ケースの中に日本刀を展示し、刃文(刃の焼きむら)がよく見えるようにするため、鑑賞に最適な角度からスポットライトを当てています。

引用:新建築 2018年7月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社

展示ケースには低反射ガラスを採用し、展示ケースのガラス面に鑑賞の妨げになる光源および器具の映り込みを生じないようにしています。

また、天井の端を下がり天井とし、照明の明るさを抑えることで、鑑賞者の視線を自然に日本刀に集中させるように考えられています。

引用:新建築 2018年7月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社

展示室を設計する際、建物内装と展示ケースを再現した実物大の模型にて、博物館の学芸員と共に幾度もの検証を行い、日本刀の見え方を確認したそうです。
各所の寸法、背景の壁の素材や色、照明器具の種類や光の強さ・色温度など、さまざまな観点から確認し、調整を図りました。
このように展示室は試行錯誤のもと作られたので、日本刀の鋭さや繊細さ、そして美しさが際立ちます。

展示されている刀剣は硬質なものであるのに対し、ロビーや展示室などの内装デザインは柔らかく対比的となっています。
また建物外観についても、正面側の硬質さと、庭園側の柔らかさも対比的な要素が作られています。
対比的にすることで、お互いの存在感が明瞭に現れます。

刀剣博物館と言うと厳格で硬いイメージがありますが、博物館は柔らかさがあり気軽に立ち寄れるので、庭園散策も含めておすすめの博物館です。

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建築概要

設計建築:槇総合計画事務所
構造:梅沢建築構造研究所
設備:森村設計
施工戸田建設
敷地面積2157.89㎡
建築面積1076.92㎡
延床面積2619.93㎡
高さ15.6m
階数地上3階
構造鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)
工期設計:2014年11月〜2016年6月
施工:2016年7月〜2017年10月
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ご利用案内・アクセス

開館時間9:30~17:00 (入館は16:30まで)
休館日月曜日(祝日の場合は翌火曜日休館)
展示替期間
年末年始
入館料<通常展>
 大人 : 1,000円(700円)
 会員 : 700円
 学生 : 500円
 中学生以下 : 無料
 障がい者・介護者 : 無料
 ※()内は団体料金(20名以上)。会員・学生は団体料金設定なし

<特別展>
 展覧会ごとに異なります。
 詳しくは公式サイトの展覧会のページをご覧下さい。
電話03-6284-1000
住所東京都墨田区横網1-12-9
アクセス<電車>
 JR総武線 両国駅 西口から徒歩7分
 都営地下鉄大江戸線 両国駅 A1出口から徒歩5分

<バス>
 都営バス・墨田区内循環バス 旧安田庭園・同愛記念病院 徒歩1分


参考元:

刀剣博物館 公式サイト
・新建築 2018年7月号 @新建築社
Design Magazine|デザインマガジン
菊川工業株式会社 | オーダー金属建材の菊川工業
LIXIL ビジネス情報
一般社団法人 日本左官業組合連合会

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