「駒沢オリンピック公園 体育館」の設計者は?特徴的な屋根の構造とは

01.現代建築
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1964年に開催された東京オリンピックにて、様々な競技の会場となった「駒沢オリンピック公園」。公園内の施設には、特徴的な構造の屋根がのった「体育館」があります。

駒沢オリンピック公園は最初に、1949年に開催された国民体育大会に向けて、ハンドボールコートとホッケー場が作られ、その後、東京オリンピックに向けて陸上競技場、体育館、記念塔などが作られました。

体育館の設計は芦原義信氏。同じ公園内のオリンピック記念塔、中央広場の設計も手がけています。また、代表的な作品には東京都芸術劇場などがあります。

今回はそんな駒沢オリンピック公園の体育館の建築を紹介します。

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特徴的な屋根の構造

駒沢オリンピック公園の体育館はなんと言っても、この屋根の形が特徴的です。約25mの高さの頂点から、4方向に約48mの棟梁が伸び、周囲を1辺約36mの軒梁が囲い、梁の間に4枚のHPシェルを施しています。HPシェルとは、アーチ(上に凸の曲線)とカテナリー(下に凸の曲線)を組み合わせたものです。

駒沢オリンピック公園体育館の屋根部位名称

4枚の四角形のHPシェルを田の字形に組み合わせているのですが、完全な正方形ではなく、隅を引き込ませているため、平面は8角形になっています。

駒沢オリンピック公園体育館の構造

ちなみにHPシェルの屋根は、鉄骨の梁に軽量コンクリートの板が打たれた素材で出来ています。

棟梁は山型に組まれていますので、重力によって外に開こうとします。足元が滑る場所で立ちながら足を大きく開くと、だんだん開いていってしまうイメージですね。この広がろうとする力を建築界ではスラスト力と言いますが、それを防ぐために、つなぎ梁と鉄骨タイビーム(鉄骨の梁のようなもの)が地中に設置されています。

引用:構造デザインマップ編集委員会「構造デザインマップ東京」,総合資格学院,2014年6月20日,169P

このように、鉄筋鉄骨コンクリートの梁と、HPシェルの組み合わせによって構造のバランスを取り、ダイナミックなデザインの構造体を実現させています。

駒沢オリンピック公園体育館入口

こちらが正面入口。軒の出の形に合わせるように、入口前の天窓をピラミッド型にデザインされています。

駒沢オリンピック公園体育館外観のガラス張り屋根

入口付近の、軒の出の下がガラス張りの屋根になっています。ガラス屋根の下はアリーナの外周部分となっており、東京オリンピック当時はサンクンガーデンだったようです。サンクンガーデンとは、地盤よりも低い位置に作られた広場・庭園のことです。

駒沢オリンピック公園体育館外観
駒沢オリンピック公園体育館外観

眺める角度によって、軒の出がかなりダイナミックに見える箇所があり、今にも飛び立ちそうな鳥を思い起こさせるデザインです。

体育館は一度、改修が行われたのですが、屋根の構造体は建設当時のまま使えたそうで、この屋根のデザインが今でも見られ、公園のシンボルのひとつとなっています。

入口は正面の他にも、役員・選手入口や、回り階段のような入口もありました。

駒沢オリンピック公園体育館の役員・選手入口
駒沢オリンピック公園体育館の外部螺旋階段
駒沢オリンピック公園体育館の外部螺旋階段

回り階段の入口も、実に面白い芸術的な形をしています。

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内観(アリーナ外周部)

駒沢オリンピック公園体育館エントランス
駒沢オリンピック公園体育館の丸窓

エントランス部分は、天窓や壁の丸窓などで、明るく広々とした空間になっています。

駒沢オリンピック公園体育館の天窓

天窓を見上げると、屋根の軒の出の部分がちょうど見えます。

駒沢オリンピック公園体育館アリーナ入口

アリーナは地下に作られており、山型に組まれた鉄筋鉄骨コンクリートの棟梁によって、観客席3000席、約100mの無柱空間を実現しています。(中を見てみたいですが、開いてませんでした。。)

駒沢オリンピック公園体育館内観

地下部分(アリーナ外周部)は自然光がふんだんに取り入れられるようになっており、地下といえども明るい空間になっています。また、地下には東京オリンピックに関する展示コーナーがあるので、訪れた際には立ち寄って見るのも良いかと思います。

駒沢オリンピック公園体育館の休憩スペース

こちらはガラス屋根の下の休憩スペースです。東京オリンピック当時は天井のガラス張りが無く、サンクンガーデンだった場所です。広々としていて、日光がたくさん注ぎ込んでいるので、建物の中にいることを感じさせません。

体育館の建物は、特徴的な屋根の構造をしており、スポーツ利用・観戦だけでなく、建築巡りにも最適な場所です。

別記事で、駒沢オリンピック公園の体育館以外も紹介していますので、是非こちらもご覧下さい。

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建築概要

設計建築:芦原建築設計研究所
構造:織本構造設計
施工鹿島建設
延床面積7,920㎡
階数地上2階、地下1階
構造鉄筋鉄骨コンクリート造
竣工1964年
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アクセス

電話03-3421-6431(駒沢オリンピック公園管理所)
住所東京都世田谷区駒沢公園1-1
アクセス東急田園都市線 駒沢大学駅 徒歩15分
※渋谷・恵比寿からすぐ近くまで、東急バスで移動出来ます。
 渋谷駅から東急バス(田園調布行き) 駒沢公園東口 下車
 恵比寿駅から東急バス(用賀行き) 駒沢公園 下車


参考元:

駒沢オリンピック公園|公園へ行こう!
様々な建築構造が集う《駒沢オリンピック公園総合運動場》 | Daily Scenery
「駒沢体育館・駒沢陸上競技場」 | とんとん・にっき2
芦原建築設計研究所|ASHIHARA Architect & Associates
・松田力「東京建築さんぽマップ」,エクスナレッジ,2016年1月1日,212P
・構造デザインマップ編集委員会「構造デザインマップ東京」,総合資格学院,2014年6月20日,169P

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