豊島区の都会の喧騒を離れた場所に、静かで心落ち着き自然と接することの出来る日本庭園の「豊島区立目白庭園」があります。
真ん中に池があり、池泉(ちせん)回遊式の日本庭園となっています。池のすぐそばには、数寄屋造りの茶室「赤鳥庵(せきちょうあん)」があり、茶道・華道・句会などの集まりが行われます。
今回はそんな都心のオアシスである豊島区立目白庭園および赤鳥庵の建築を紹介します。
庭園
目白庭園には、赤鳥庵の他、表門(長屋門)や大池、滝や六角浮き見堂など、面積2,842㎡のこぢんまりとした敷地の中、見どころが数々あります。
庭園の設計は伊藤邦衛氏。日本武道館がある北の丸公園や、浜松城公園などを手がけています。
表門(長屋門)は、瓦葺きの切妻屋根に、白漆喰の壁が特徴の入口です。ここからでも和風の庭園に仕上がっているのだろうということが分かります。庭園の廻りは、築地塀(ついじべい。泥土をつき固めて作った塀)で囲まれています。
入口は木造の趣ある見た目で、ここを通ると庭園の緑がいっぱいに広がります。
赤鳥庵は庭園の緑の中にひっそりと佇んでいます。
真ん中の大池は、広さ約500㎡、最大深さ約1.2mあり、味のある庭園の風景を作り出しています。
池の飛び石通路です。画像奥には井戸があります。また、鯉が優雅に泳ぐ姿も見ることが出来ます。
水面に庭園の自然が映し出されています。画像は夏の新緑の風景ですが、春には桜、秋には紅葉など、季節ごとに景色が変わります。
池には鯉の他にも、カルガモの姿も見ることが出来ます。
庭園の中には滝が設置されており、高さ4mから毎分3トンもの水が流れています。特別、大きな滝ではないものの、これだけの水が流れ出ているのは意外でした。
六角形の小さい休憩所は「六角浮き見堂」というものです。屋根の頂部には、赤鳥庵の名前のもとになった赤い鳥をイメージした益子焼の飾りがあります。
大池の風景と庭園の自然と接しながら、ゆったりと休むことが出来ます。
丸太にて放射状に垂木が組まれ、真ん中天辺には丸太を六角形の井桁に組んで、井桁の中に木材が織られたような模様があしらわれています。
天井には水面から反射した光がゆらゆらと映り込み、癒やしの空間が出来上がっています。
赤鳥庵
目白庭園の中にある、木造平屋建ての数寄屋造りに茶室「赤鳥庵(せきちょうあん)」は、日本庭園にふさわしい和風建築となっています。
大池のすぐ近くに石垣が作られ、その上に建てています。京都の北山杉を使用しており、屋根は和風建築らしく瓦葺きの入母屋屋根となっています。
設計は大関徹氏。五島美術館などを手がけた吉田五十八(よしだいそや)氏の弟子となります。
ちなみに「赤鳥庵」の名称は、1918年に創刊された文芸雑誌「赤い鳥」にちなんで名付けられました。赤い鳥を主宰した鈴木三重吉氏は、庭園の東側にあった自宅の他に、庭園の森の中の隠居家風の一軒家を事務所として借り、「赤鳥庵」と名付けられたと伝えられています。
引用:豊島区立 目白庭園 公式サイト | © 2021 かたばみ・鹿島建物共同事業体
赤鳥庵の内部は落ち着いた雰囲気の和室となっています。
天井は目透かしと棹縁を交互に使っています。目透かしとは、幅広板を張るときに板の間を1cm程度あける工法です。棹縁(さおぶち)とは、天井面に渡されている25mm角程度の細い木材です。
障子は大きな組子となっており、下半分が開けられ外の庭園風景を眺めることが出来ます。
壁の仕上がりには、刃掛け(はっかけ)が用いられています。刃掛けとは、木材と壁が出会うところで、壁の枠材を見せたくないときに、枠材を鋭利に削ってその部分まで壁を塗る仕上げる工法です。
式台は畳の間と同じ高さにしています。式台は、玄関先の一段低くなった板敷きなのですが、通常は内部と一段下げて作られます。
また、日本の木造建築は基本モジュール1.8m×0.9mの基準線を引いて、そこから間取りを設計してくわけですが、赤鳥庵は2.0m×1.0mの大きめなモジュールで作られ、通常よりスケール感が違うため、現場では苦労したそうです。
もともと大手デベロッパーがマンションを建てようとしていましたが、これに町会長や自治会は反対し、情熱を持って訴えかけたことで、現在もこの目白庭園が残されています。
都心の中を歩くことに疲れた際には、豊島区立目白庭園を訪れてみてはいかがでしょうか。
ご利用案内・アクセス
開園時間 | 9~6月:9:00~17:00 7~8月:9:00~19:00 |
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休館日 | 毎月第2・4月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日休園日) 年末年始(12月29日~1月3日) |
入館料 | 無料 ※赤鳥庵は有料(事前申請が必要) |
電話 | 03-5996-4810(目白庭園管理事務所) |
住所 | 東京都豊島区目白3-20-18 |
アクセス | JR線 目白駅 徒歩5分 JR線 池袋駅 徒歩15分 |
※2021年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。
参考元:
・豊島区立 目白庭園 公式サイト
・目白庭園 | 日本庭園巡り
・豊島区立目白庭園 / 作品一覧 – 藤森工務店
・伊藤邦衛の庭園一覧 | 庭園情報メディア[おにわさん]