江戸城跡と堀を挟んで構えている、日本で最初の国立美術館である「東京国立近代美術館」は、約4,500㎡の展示スペースを有しており、13,000点を超える美術所蔵品を持つ国内有数の美術館となっています。
もともと、1952年に中央区京橋にあった旧日活本社ビルを改装して、美術館として開館しました。東京文化会館などを手がけた前川國男氏が設計した美術館でしたが、所蔵品の増加により1969年に現在の位置に美術館機能が移転されました。
現在の東京国立近代美術館の設計は谷口吉郎氏。東京国立博物館の東洋館などを手がけた建築家です。
建物本体が柱で持ち上げられどっしりと構えたような形ですが、展示室以外にも休憩所などがあり過ごしやすい美術館です。
今回はそんな東京国立近代美術館の建築を紹介します。
本体が持ち上げられた構造
1階はピロティ、2階はデッキとなっており、3~4階部分を支える柱が並んでいます。
上層部を下層部の柱によって支える構造は、江戸東京博物館や国立西洋美術館とよく似ています。どれも、下層部はエントランスまたは広場、上層部は広い展示空間になっているので、博物館・美術館はこういった構造が効率よさそうですね。
また、柱の形状や2階にデッキが設けられている点は、同じく谷口吉郎氏が設計した東京国立博物館の東洋館とよく似ています。
美術館が出来てから30周年をきっかけに、坂倉建築研究所の設計により大規模な増改築が行われ、展示室や休憩スペースの増設や、アートライブラリ・レストラン・ミュージアムショップの新設がなされました。加えて、耐震補強や展示空間環境の整備、バリアフリー化も行われています。
耐震補強については、既存建物の西側から北側にかけてL字型に増築することで、増築部分が地震力を7割負担するようになっています。上空から見ると増築部分が分かりやすいかと思います。
ただ改修前は、谷口吉郎氏の建築の特徴であった大きな吹き抜けとスキップフロアがあったようですが、耐震化とバリアフリー化を施すため、なくなってしまいました。
一部、改修前の姿を思い起こさせる大きな窓とサッシが残されており「建物を思う部屋」として保存されています。
展示室をはじめ、その他にも見どころあり
展示室はもちろんのこと、それ以外にも見どころがあるので紹介していきます。
1階のエントランスは柱が列をなすピロティとなっておりガラス張りとなっているので、自然光がたくさん入ります。2階のデッキが庇の役割を果たしているので直射日光が入らず、写真奥にある休憩スペースは過ごしやすい場所になっています。
天井には、わずかにアーチ型になった梁のようなデザインが連続して施されており、エントランス空間にアクセントがあります。
展示室には白壁と黒壁の場所があり、展示空間に変化をもたせています。
展望休憩室は奥の鏡によって開放感が増し、オレンジ色の床によってとても明るい空間になっています。展望休憩室からは江戸城跡の石垣が眺められます。
こちらはミュージアムショップ。美術館の離れに作られているのが特徴であり、ここもガラス張りになっているので、気軽に入りやすくなっています。
ミュージアムショップの近くには、石垣が作られており美術館と隣接しています。敷地の場所が場所だけに、江戸城跡を思い起こさます。
展示を楽しむ他にも美術館建築に目を向けると、美術館巡りがより一層楽しめられます。
建築概要
設計 | 創建:谷口吉郎 増改築:関東地方建設局営繕部、坂倉建築研究所 |
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施工 | 鹿島松村特定建設工事JV |
敷地面積 | 5,579㎡ |
建築面積 | 3,328㎡ |
延床面積 | 14,439㎡ |
階数 | 地上4階、地下1階 |
構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 |
竣工 | 創建:1952年 増改築:2001年 |
ご利用案内・アクセス
開館時間 | 火・水・木・日:10:00~17:00(入館は16:30まで) 金・土:10:00~20:00(入館は19:30まで) |
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休館日 | 月曜日(祝日は開館し翌日休館)、展示替期間、年末年始 |
観覧料 (所蔵作品展) | <一般> 個人:500円 団体(20名以上):400円 5時から割引:300円 <大学生> 個人:250円 団体(20名以上):200円 5時から割引:150円 ※高校生以下及び18歳未満、65歳以上は無料。 ※企画展は展示会内容により異なります。詳細は公式サイトをご確認下さい。 |
電話 | 050-5541-8600 |
住所 | 東京都千代田区北の丸公園3-1 |
アクセス | 東京メトロ東西線 竹橋駅 1B出口より徒歩3分 |
※2021年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。
参考元:
・東京国立近代美術館 公式サイト
・東京国立近代美術館増改築 | 営繕 | 国土交通省関東地方整備局ホームページ
・新建築オンライン
・東京国立近代美術館~古きを支える~ – 建築物探訪ブログ