「ヨックモックミュージアム」はアットホームな雰囲気に設計された美術館

01.現代建築
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南青山の閑静な住宅地に、住宅のような美術館「ヨックモックミュージアム」があり、見た目の通りアットホームな雰囲気のある美術館となっています。菓子は創造するものという想いから、ヨックモックが30年以上かけて500点以上ピカソのセラミック作品や絵画作品を収集して、ヨックモックのお菓子と共鳴する作品を展示しています。

設計は栗田祥弘氏。隈研吾建築都市設計事務所に9年間在籍し、2013年に独立して栗田祥弘建築都市研究所を設立しています。友人を招くようにみなさまをお迎えしたいという想いをコンセプトに、2015年から計画が始まり、2020年10月25日にミュージアムは開館しました。

今回はそんなアットホームな雰囲気のあるヨックモックミュージアムの建築を紹介します。

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住宅のような外観

ヨックモックミュージアム外観

家に友人を招くようにお迎えしたいというコンセプトから、南青山の住宅街の中に建てられました。森の中に建てる案も挙がったそうですが、閑静な住宅街の方がよりコンセプトに合致することから、敷地は現在の場所が選ばれました。

また、外観は家のように瓦屋根となっており、住宅街に溶け込むようなデザインです。都会の喧騒を避け、来館者が落ち着いてくつろげるようになっています。

ヨックモックミュージアム外観

建物はコの字型平面で中庭が設けられ、加えて屋根の軒下にはスリットが入っているので、内部に光がふんだんに取り入れられて、とても明るい空間になっています。

ヨックモックミュージアム外観

入口付近はこのように上から壁を吊る形になっており、威圧感を軽減して視認性に優れた入口になっています。柔らかい色の吊り壁の下に植物が植えられ、入りやすい雰囲気です。

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屋根や壁などにピカソにまつわる素材を使用

建物の外観を形成する屋根や壁には、ピカソにまつわる焼き物が使用されています。美術館はセラミック作品を中心に展示しており、お菓子の焼き物と共通して、焼き物の素材にこだわっています。

ヨックモックミュージアムの屋根瓦

屋根には、ピカソがセラミック制作をしていたコート・ダジュールの瓦をイメージしています。コート・ダジュールと聞くと、どうしてもカラオケを思い出してしまいますが、コート・ダジュールは南フランスにある海岸であり、自然の眺めが美しく保養地として知られる海岸です。

ヨックモックミュージアムの壁タイル
ヨックモックミュージアムの床タイル

壁および床は、陶芸の窯で使われている耐熱レンガをイメージしています。

ヨックモックミュージアムの壁タイル

壁の一部には、青い瓦のような円柱形のタイルが貼られています。

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友人を招き入れるような内部空間

ヨックモックミュージアムの1階は、カフェライブラリーショップなどがあり、アートセッションやワークショップが楽しめられる場となっています。

ヨックモックミュージアム内観

カフェ内部は、床のタイルや天井の木材によって温かみがあり、中庭に面して大きなガラス戸があるので、日の光がふんだんに入ります。このガラス戸は全開にすることができ、自然を感じながらくつろげられます。

ヨックモックミュージアム内観

カフェと同じ空間にショップやイベントスペースがあります。壁一面には、列ごとに段の高さを変えた棚が設置されており、様々な小物や書籍、商品が置かれ、インテリアの一部になっています。レジの後ろには楕円形が集合した鏡が飾られ、お洒落に彩られています。

ちなみに、カフェの店名になっているヴァローリスは、ピカソが戦後にセラミック制作に取り組んだ町の名前から名づけられています。

ヨックモックミュージアムの中庭
ヨックモックミュージアムの中庭

中庭にはハナミズキが植えられ、季節ごとに中庭の風景の変化を楽しむことが出来ます。

ヨックモックミュージアムの中庭

中庭やカフェなどには、展示室を通らずに外から直接アクセス出来るようになっています。

展示室は撮影禁止となっており写真はありませんが、地下1階と地上2階が展示室となっており、それぞれ全く違った表情を見せています。

展示鑑賞では、最初に1階のエントランスから受付の脇の階段を下りて、地下1階の展示室へ入っていきます。アートの世界に没入する気持ちを少しずつ高めていくため、階段は下っていくにつれて暗くされています。

ヨックモックミュージアムのフロアマップ

地下1階に到着すると、展示室の壁は一面、黒一色となっており、照明を暗くして作品にスポットライトを当てています。作品は、花瓶やお皿などのセラミックや絵画などが展示されています。セラミックはアクリルケースには入っておらず、まるでキッチンやリビングに置かれている食器のように、じかにセラミック作品を見ることが出来ます。(近付き過ぎないようにロープは設置されていましたが。)アクリル越しではなく、直接作品を見るとやはり鮮明な感じがします。

地下1階の暗い展示室が終わると、今度はエレベータで地上2階の展示室に上がっていきます。

地上2階は地下1階と相反して、壁は白一色となっており、自然光あふれる明るい空間になっています。天井は最も高い位置で7.5mあり、開口部のガラス戸も大きく、壁上部にスリットが入っているので、とても開放感があります。2階はセラミック作品のみが展示されており、一部の壁には55点のお皿がずらーっと展示されています。セラミックは紫外線に強い上に、自然光だと色が際立つため、自然光あふれる明るい展示室となっています。

友人を招き入れるようなコンセプトで作られた、家のような雰囲気がある美術館のヨックモックミュージアム。カフェ空間の心地よさと、地下1階と地上2階のギャップが楽しめられ、ヨックモックファンやピカソファンはもちろんのこと、それ以外の方も楽しめられる美術館となっています。

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建築概要

設計栗田祥弘建築都市研究所
施工株式会社佐藤秀
敷地面積318.82㎡
建築面積222.77㎡
延床面積902.00㎡
最高高さ14.614m
階数地上2階、地下3階
構造鉄骨ブレース構造、一部鉄筋コンクリート造
工期設計:2016年2月~2017年10月
施工:2018年1月~2020年6月15日
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ご利用案内・アクセス

開館時間10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日月曜日(祝日の場合は開館)、年末年始、展示替期間
入館料大人   :1,200円
中~大学生:800円
小学生以下:無料
電話03-3486-8000
住所東京都港区南青山6丁目15−1
アクセス<電車>
 東京メトロ 表参道駅 B1出口より徒歩9分
 各線 渋谷駅 C1出口より徒歩15分
<バス>
 渋谷駅東口から都営バス(新橋駅前行) 青山学院中等部前 下車徒歩1分

※2021年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。


参考元:

ヨックモックミュージアム | Just another WordPress site
栗田祥弘建築都市研究所 | home
ヨックモックミュージアムの建物が公開。「友人を招くような美術館に」|美術手帖
建築家・栗田祥弘とクライアントが5年の歳月をかけて完成させた、南青山のピカソのセラミック作品を展示する“家のような”美術館「ヨックモックミュージアム」のレポート | architecturephoto.net
コート・ダジュール – Wikipedia

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