東京大学の「情報学環・福武ホール」は東大生じゃなくても一見する価値のある建物

01.現代建築
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東京大学の本郷キャンパス内に作られた「情報学環・福武ホール」は、東京大学創立130周年を記念して計画され、2008年3月26日に竣工しました。この福武ホールは、本郷キャンパスの入口である赤門のすぐ近くに位置します。

奥行き15m、長さ100mの細長い敷地に、200人収容のホールを含む校舎施設の計画がされ、キャンパス内外を接続し、新たなパブリック・スペースを作り出すこと目標としました。

この建物は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。2010年度BCS賞を受賞しています。
BCS賞とは、一般社団法人 日本建設業連合会により、 日本国内の優秀な建築作品に与えられる賞となります。

今回はそんな、東京大学にある情報学環境・福武ホールを紹介します。

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どんな施設?

福武ホールは、学びと創造の交差路を理念として、社会との対話から学び、新しい研究を創造する場として作られました。

地下に作られた講演などを行う福武ラーニングシアターは、定員184名の劇場型空間であり、シンポジウムや国際遠隔授業などに利用されています。

新建築 2008年5月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社

また、シアター外のホワイエとなる空間には、福武ラーニングシアターのロビーや、立食パーティの会場として、交流し語り合う場となります。そのホワイエには安藤忠雄氏がデザインしたベンチが置かれており、シナベニヤを積層して作られています。

新建築 2008年5月号 ©︎ Shinkenchiku-sha / 新建築社

他にも、小規模の工房型空間の福武ラーニングスタジオ、企業との共同研究をする福武ラーニングラボ、コミュニティースペースとなる学環コモンズなど、新しい研究を生み出すための空間が多数用意されています。

また福武ホールの一角にはUT cafeがあり、ここでゆっくりお茶をしながら、知的な会話を楽しむことが出来ます。

また、多目的トイレ、エレベーター、スロープなどのバリアフリー設備があるので、車椅子で来ても安心です。

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立ちはだかる「考える壁」

福武ホールの手前には、「考える壁」と言われる、長さ100m、高さ3.6mのコンクリート壁が立ちはだかっています。

この「考える壁」の背景には、大学のキャンパスとをつなぐ間を創出するため、オープンスペース、そして地下空間があり、そこからホール内部に入っていく造りになっています。

この壁の持つ意味として、新しいものを生み出すためには必ず壁が立ちはだかるが、この壁は障害ではなく、多くの人々の新しい学びと成長をもたらしてくれる事をコンセプトとして、「考える壁」が作られました。

その壁を乗り越えた先には、逆にその壁によって守られる。すなわち、壁のおかげで逆境に耐えられる程の能力を得て成長出来る。そのような空間に感じられます。

こちらはホール前のテラスとなり、床は玉砂利洗い出し仕上げとなっています。
玉砂利洗い出し仕上げとは、練り合わせたセメントと玉砂利を地面に塗り、完全に硬化する前に表面を水洗いすることで表面に砂利を露出させる左官工法で、和風と洋風どちらにも合わせられ、室内外問わず幅広く使われています。

こちらは地下2階部分のテラスです。
窓の連続する方立は900mピッチで作られており、見た目にも綺麗です。

屋外イベントが開催された時など、夜間には「考える壁」が大スクリーンにもなります。

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周辺環境を大事にした建築

福武ホールの本郷通り側には、樹齢100年以上、高さ30m余りのクスノキがあり、建物をクスノキの緑の景観を遮らない高さに抑えました。その結果、ボリュームの半分以上が地下に作られました。
断面図を見ていただくと、地下部分のボリュームの大きさがよく分かります。

新建築 2008年5月号 ©︎ Shinkenchiku Data / 新建築データ 2020

地上部分のファサード(前面)については、ホールと同様に長い間口を持つ京都の三十三間堂を参照し、全体のプロポーションを決定したそうです。
歴史的建築物にならってデザインを考慮すると、美しい見た目になります。

ちなみに、計画当初は大学構内の道路下にボリュームを置き、全てのボリュームを地下に作ることを構想していましたが、計画途中で道路下に共同溝があることが判明し、計画は断念しました。
そんな事もあり地上2階、地下2階の計画に落ち着いたようです。

建物が、後ろにある既存の樹木の風景を遮らないよう、細心の注意を払いつつ福武ホールが作られました。

もし、全てのボリュームを地下に入れられれば完璧だったのかもしれませんが、敷地の状況と、建築要件とのバランスを考慮し、なんとかクスノキの風景を守ることが出来たのではないかと思います。

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建築概要

設計建築:安藤忠雄建築研究所
構造:金箱構造設計事務所
設備:森村設計
施工鹿島建設
敷地面積40,2682.18㎡(キャンパス全体)
建築面積1,454.15㎡
延床面積4,045.66㎡
最高高さ7.2m
階数地下2階、地上2階
構造鉄筋コンクリート造
工期設計:2005年9月~2006年9月
施工:2006年12月~2008年3月
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ご利用案内・アクセス

開館日福武ホール:月~金(行事が開催される場合、土日祝も開館)
UT cafe BERTHOLLET Rouge:月~土
開館時間福武ホール:8:00~20:00
UT cafe BERTHOLLET Rouge:11:00~21:30
電話福武ホール:03-5841-0328
UT cafe BERTHOLLET Rouge:03-5841-0211
住所東京都文京区本郷7-3-1
アクセス都営大江戸線 本郷三丁目駅 徒歩7分
東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅 徒歩8分
東京メトロ南北線 東大前駅 徒歩10分
東京メトロ千代田線 根津駅 徒歩15分
東京メトロ千代田線 湯島駅 徒歩20分

※2020年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。


参考元:

情報学環・福武ホール 公式サイト
【生活110番】暮らしの中の「困った!」を解決します
・「新建築2008年5月号」,新建築社

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