京王線仙川駅の近く、松原通り沿いにある「安藤ストリート」は、2004〜2012年にかけて作られた6件もの安藤忠雄建築が建ち並ぶ全長500mのエリアとなっており、仙川の観光スポットとなっています。
日本、いや、世界でここまで安藤建築が並んでいる所は他に無いと言われており、建築ファン必見のストリートとなっています。
建築ファンのみならず、仙川に遊びに来た人にも一度は見て頂きたい場所です。
安藤ストリートの中には、丹下健三氏の設計事務所に所属していた中地正隆氏という建築家が手がけた建築も2件あり、そちらも見どころとなりますので一緒に紹介します。
安藤ストリート全体地図
安藤建築は6件とも、仙川駅から徒歩5分圏内に位置しています。
上図の、青で示した建物が安藤忠雄氏、オレンジで示した建物が中地正隆氏が設計したものとなります。安藤忠雄建築は公共施設であるけれども、半分オブジェのような建物です。駅前商店街エリアや、仙川アヴェニューなどカフェやショップに寄りながら、安藤ストリートを見るのがオススメです。
安藤ストリートが形成されたきっかけは、もともと細長かった土地に、都道(松原通り)が斜めに計画されたことにより、土地が細長い三角形に分断されました。その土地を有効活用させるため、地主が安藤忠雄氏に依頼しました。(上図の緑色の部分が地主の土地)
シティハウス仙川ステーションコート
北から順に紹介していきます。まずは、2012年3月に完成した「シティハウス仙川ステーションコート」です。
安藤ストリートの中では最も規模が大きい建物であり、総戸数91戸からなるマンションです。
コンクリート打ちっぱなしは安藤忠雄建築の特徴であり、安藤ストリートではスモークドガラスが使われていることが多いです。ステーションコートでは手すりガラスに使われています。
1階部分の縦長窓です。細長い窓も安藤忠雄建築の特徴です。内部への光の取り入れ方が独特ですね。
ちなみに賃貸料は、例えば2LDKで16~18万。仙川の2LDKの家賃相場は14~15万くらいなので、相場より少し高いです。有名建築家が建てただけあって、高めに設定しているのですね。
部屋の内装は、一般的なマンションと同様に、不便を感じなさそうな内装となっています。部屋の内装、間取りについてはコチラの不動産サイトをご覧下さい。
仙川デルタスタジオ
続いて、2007年6月に完成した「仙川デルタスタジオ」です。
三角形の狭い土地に建てられ、それゆえ建物も細長いものとなりました。
2階へ上る階段の幅は狭く、高いコンクリートの塀が若干圧迫感がある気がします。
土地の形に合わせて、建物も細長い三角形に建てられた様子が外観からでも分かります。
道路側はすべて、開くことの出来ないスモークのはめ殺しガラスとなっており、少し冷たい印象があります。
建物の近くに、平面図が展示されています。
細長く、使い勝手が悪そうに感じますが、テナントに歯医者と写真スタジオが入っており、細長いスペースをうまく使っているのでしょう。
複合施設(せんがわ劇場・ふれあいの家・仙川保育園)
続いては、2007年12月に完成した「せんがわ劇場」「ふれあいの家」「仙川保育園」の複合施設です。
外観は、北側の台形を逆さにしたような部分に目を引かれます、ここは楽屋部分となるようです。縦長と横長の窓枠が交差し、光の教会を思い出すデザイン。ここにも安藤忠雄建築の特徴である長い窓がデザインされています。
調布市は、音楽と芝居小屋のあるまちづくりを安藤に依頼しました。この、せんがわ劇場のコンセプトは、舞台芸術を楽しむ市民
の育成です。舞台芸術を通じて、仙川を活性化させるのが狙いで建てられました。
楽屋部分の窓になりますが、窓が下向きに傾斜しているため、開くときがなんとなく危ないですね・・・。楽屋内部から見ても、やはり開くときに危なそうな感じがします。
平面図、楽屋内部についてはコチラをご覧下さい。
北側部分以外は、コンクリートの枠にスモークドガラスがずっと続き、冷たい印象があります。舞台芸術を市民に発信するのであれば、もう少し中が見え、街並みに開かれた感じにしてもよいのではないかと思いましたが、安藤氏なりの考えがあったのでしょう。
ここが、せんがわ劇場とふれあいの家の入口です。唯一、街に開かれている部分になります。仙川保育園の入口は裏側になります。
表と裏では全く違った表情を持っていますね。コンクリート打ちっ放しではあるものの、こちらは明るく感じます。
シティハウス仙川
続いては、2004年5月に完成した「シティハウス仙川」です。
1階の列柱の中には、カフェ、レストラン、ショップなどが入っており、割と便利そうです。
前述のステーションコートの方も、外観デザインをこのシティハウス仙川に合わせています。
屋上緑化を施しています。一見、後ろにも建物があるように見えますが、4階部分と1~3階部分の角度をずらせており、同じ建物です。壁の角度をずらす手法も、安藤忠雄建築の特徴です。
賃貸料は前述のステーションコートと同じく、2LDKで16~18万ほど。部屋の内装はステーションコートと同じく、不便を感じなさそうな内装となっています。部屋の内装、間取りについてはコチラの不動産サイトをご覧下さい。
東京アートミュージアム
続いては、2004年10月に完成した「東京アートミュージアム」です。
気軽に芸術や文化を楽しめることを目指して建てられました。
外観はコンクリートの壁に細長の窓が設置されており、せんがわ劇場の楽屋部分のようなデザインです。
入口は窓と繋がった一部のようになっており、見るからに独特な内観であることが想像出来ます。中に入って見れば、やはり独特な空間。暗い部屋の中に一筋の光を差し込ませる手法も、安藤忠雄建築の特徴の一つです。
内観の画像については公式サイトをご覧下さい。
仙川アヴェニュー アネックスⅡ
続いては、2004年11月に完成した「仙川アヴェニュー アネックスⅡ」です。
コンクリート打ちっぱなしにスモークドガラスの手すりはシティハウス仙川と同じですが、この建物はアーチ型の屋根が付いているのが特徴です。
Y字型の鉄骨にて屋根を支えているように見えますね。アーチ型の屋根のおかげか、他の建物より柔らかさがあります。
賃貸料は1Kで13~14万円。仙川の1Kの相場は7~8万円で、結構高めに設定されていますが、居間は12帖あり、割と広いです。部屋の内装、間取りについてはコチラの不動産サイトをご覧下さい。
仙川アヴェニュー 南パティオ
続いては、安藤忠雄氏の設計ではありませんが、1988年に完成した「仙川アヴェニュー 南パティオ」を紹介します。設計者は中地正隆氏となります。
コンクリートの枠が特徴的な建物です。設計者は違えど、こちらもコンクリート打ちっ放しの建物になります。東京都庁やフジテレビ本社を手がけた丹下健三氏と仕事していたというだけあり、丹下氏の魂を受け継いでいるように感じます。丹下健三建築とよく似ていますね。
カフェやショップなどが入っており、割と気軽に入りやすいです。
仙川アヴェニュー 北プラザ
続いては、1988年に完成した「仙川アヴェニュー 北プラザ」を紹介します。こちらも設計者は中地正隆氏となります。
南パティオと同じく、コンクリートの枠が特徴的な建物です。
カフェやショップなどが入っていて、気軽に入りやすい点も南パティオと同じです。
中庭を取り囲むように建っており、またコンクリートの枠があることで余裕のある空間を形成しています。
北プラザには音楽ホールも併設されています。(現在は閉鎖しています。)
中地正隆氏が設計した「仙川アヴェニュー 南パティオ・北プラザ」は、安藤忠雄氏が手がけた建物よりもだいぶ早く完成しています。始めは中地氏が街を形成する方向でしたが、都道の計画の問題が出てきてから安藤氏が街を形成する方向に舵が切られました。
安藤ストリートは、殺風景で死んだような街と批判されがちですが、こういった一風変わったシャープな街並みもまたアリだと思います。どこに行っても同じ風景というよりも、地域ごとに違った表情を持っていた方が面白いと思います。
参考元:
・東京アートミュージアムウェブサイト
・せんがわ劇場 | 調布市せんがわ劇場公式サイト
・調布の魅力再発見!「仙川・安藤ストリート」 – YouTube
・【ホームズ】不動産売買・賃貸・住宅情報サイト
・仙川安藤ストリートを行く – 東京建築散歩
・安藤建築と芸術・文化が集う仙川「安藤ストリート」 | PANDA Chronicle