「としまエコミューゼタウン」は隈研吾氏が手がけた環境に良い区役所庁舎

01.現代建築
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池袋駅から東に少し離れ、閑静な住宅街の近くに位置する「としまエコミューゼタウン」は、豊島区役所庁舎とマンションが一体となっており、庁舎には無料で開放されている自然環境が豊富なエコミュージアムがあり、用事がなくても来たくなる庁舎を目指した施設です。

施設名である「エコミューゼタウン」とは、エコ(環境対策)とミュージアム(美術館・博物館)そしてタウン(人が集まる街)を組み合わせ名付けられました。

設計全般は日本設計が担当し、外観デザインを隈研吾氏が監修。ランドスケープデザインはランドスケープ・プラスが担当しました。
これまでにグッドデザイン賞、BCS賞(建築業協会の賞)などを受賞し、評価された建築となります。

今回はそんな、としまエコミューゼタウンの環境対策が施された建築の特徴を紹介します。

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財政難の中、建設されたビル

としまエコミューゼタウンが建設される前、旧庁舎の老朽化が進み、耐震上の問題から新庁舎の建設をする必要がありましたが、当時の豊島区は財政難に陥っており、新しく庁舎を建てる余裕がありませんでした。

その頃、豊島区内には2001年に統廃合されて廃校になった旧日出小学校の跡地があり、これを機に密集した住宅地の再開発を、地元の人たちから要望を受けていました。

そこで、低層部分に新庁舎を、高層部分にタワーマンションを配置した、庁舎とマンションが一体となったビルの建設を行いました。
このようなマンションと一体となった庁舎の建設は、どこの自治体も行った事がない日本初の試みです。

敷地は、廃校になった旧日出小学校などの敷地を無償で譲渡してもらい、不足分の面積の土地代は購入。その土地代については、旧庁舎の跡地を民間に貸し付け、その借地代で補っています。
そのため、としまエコミューゼタウンの建設には豊島区民の税金が使われていません。

区庁舎とマンションとを一棟にまとめることで、低層部分は周辺の街とつながりのある場を、高層部分には居住環境の良い住宅を配置することが出来ました。

1~9階は豊島区役所庁舎、10階は中間免震階、11~49階はマンション「ブリリアタワー池袋」となります。
区庁舎では、1階は総合案内、3~4階は各種窓口サービスゾーン、5階は災害対策ゾーン、6~7階は事務室ゾーン、8~9階は区議会ゾーン、10階は豊島の森の入口となります。

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環境に配慮された建物

外観デザインを監修した隈研吾氏は、樹木のような建物を考えていました。
環境対策が施された環境庁舎を目指し、環境に配慮された建物を構成しました。

池袋駅と、としまエコミューゼタウンとをつなぐ、グリーン大通りの並木と合わせて、緑豊かな外観デザインとすることで、周辺の都市とつながりを作ります。
樹木(建物)の足元では、緑豊かな環境の中で人々がくつろいでおり、まさに庁舎と街、言わば官と民とのつながりが創られています。

建物の四方は道路に囲まれていますが、四方を幅4m以上の緑化した歩道が確保されています。

建物の緑豊かな環境作りには、内部吹き抜けによって自然換気や自然採光をする「エコヴォイド」、屋上庭園である豊島の森やグリーンテラスなどの「エコミューゼ」、太陽光発電や緑化パネルなどが設置された「エコヴェール」といった、環境技術を取り入れています。

こうした技術のおかげで、従来の建物に比べて、CO2排出量を45%以上抑えることが出来ます。

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エコヴォイド(内部吹き抜け)

庁舎の中には、1~9階までの吹き抜けているアトリウムがあります。

このアトリウムは、上部に採光装置(トップライト)を併設し、自然換気、自然採光を可能にします。このような環境技術は「エコヴォイド」と呼ばれています。

木製ルーバーがランダムに設置され、またルーバー1本1本の奥行きを変化させており、この絶妙な素材の調整によって、滝の流れのように見える動きのある隈研吾氏らしいデザインです。

建物の入口は東西南北の4ヵ所に設けられており、どの方向から入っても、この建物中央のアトリウムにたどり着きます。
そしてアトリウム1階には区役所総合案内が設置されているので、各階の目的の窓口に迷わず行く事が出来ます。

四方の地上入口の他、有楽町線の東池袋駅と地下通路で直結していますので、雨の日でも安心して訪れる事が出来ます。
また、この地下通路はサンシャインシティまで結ばれています。

有楽町線から訪れた場合、地下通路にこのような木製ルーバーの光景が見られます。この地下通路から隈研吾氏のデザインが始まっているわけですね。

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エコミューゼ(豊島の森、グリーンテラス)

4~10階の緑化されている外観部分は「エコミューゼ」という環境技術が施されており、豊島区の自然を再現した10階にある豊島の森や、緑に親しめる4、6、8階にあるグリーンテラスがあります。

豊島の森は、豊島区に存在した植物や生態などの自然のしくみを学ぶ場であり、憩いの場でもあるので、小中学生の環境教育にも活用されているそうです。

生徒達が座るベンチの近くには、荒川水域の生物を観察できる水槽やビオトープが設けられています。

10階から4階まで階段で降りられるようになっていますが、4、6、8階にはグリーンテラスが設けられており、10階の豊島の森から外階段でつながれています。10Fの豊島の森までいかなくても、4、6、8階からグリーンテラスにアクセス出来ます。

10階から下まで階段で降りられるようにし、ジグザク状に、屋上庭園の見学ルートや小川のせせらぎが流れるようにしています。10階から階段で下りられるような工夫は、世界的にも珍しいそうです。

こちらがエコミューゼの全体図。このように、豊島に存在した自然環境を体感できる見学ルートが設けられています。

エコミューゼには、このような小川のせせらぎが数多くあります。雨水が再利用され、メダカやカエルが生息出来るように検討されたそうです。
自然環境を作り出し、生態系が保全されたエコミューゼは、まさに自然の生態系を体験出来る場になります。

エコミューゼを訪れる際、あまりの悪天候の時は10Fの豊島の森は閉鎖されてしまうので、天気の良い日に訪れる事をおすすめします。

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エコヴェール(太陽光発電、緑化パネルなど)

外観低層部のパネルは、太陽光発電パネル、緑化パネル、エコルーバーパネル、ソーラーパネル、透明ガラスパネルの5種類で構成された「エコヴェール」という環境技術になります。

これほどの種類のパネルが多数設置され、太陽光発電、自然採光、防音、日射抑制、目隠し、断熱強化など、様々な効果を生んでいます。

また低層部には、このようにパネルに似せたデザインの外壁があり、統一感を持たせています。

エコヴェールは、樹木の葉のように建物を覆い、大きなビル一棟ではなく小さく建物が分解しているように見せて、周辺の街になじませています。
植物の成長とともに、建物も成長していく様を体感してもらいたいという想いから、このようなエコヴェールが作られました。

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震災に強いビル

としまエコミューゼタウンは、自然環境に良いだけではなく、震災に強いビルとなっています。

10階部分を中間免震階とし、積層ゴムの免震装置を入れ、構造の異なる上層部と下層部が、共に揺れるのを防ぎます。
加えて、直径2.2メートル~2.7メートルの117本の杭を、地下45mの強固な地盤まで入れて安定させています。

100年以上の耐久性を持つ超高強度コンクリートを、建物および支持杭に使用し、震度7の地震に十分耐える設計となっています。

また災害時に庁舎が災害対策本部として機能するように、耐震性に加えて、3日間対応できる非常用発電設備や、耐震性の高いエレベーターが設置されています。

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住宅ゾーン

11-49階は住宅ゾーンとなり、高級レジデンス「ブリリアタワー池袋」になります。
432戸ものマンションが住宅ゾーンにあるため、低層階の豊島区役所庁舎には、コンビニ、カフェ、レストラン、診療所など、生活に便利なテナントが入っています。

住宅ゾーンの外観には、太陽光パネル、ソーラーガラス、透明ガラス、カラーガラスが設置されています。
また、住宅ゾーンの下部にあたる11~16階部分は、下に向かって末広がりになっており、樹木のようにしっかり大地に根を張った大樹に見立てられ、建物は作られています。

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他にも見どころ満載

庁舎の廊下には様々な展示が行われており、まるごとミュージアムという、ふくろうコレクションや回廊美術館があります。

ふくろうコレクション

池袋は「ふくろう」に語呂が近いことから、ふくろうは豊島区のイメージとなりました。池袋駅にも「いけふくろう」の像があり、ふくろうのイメージが定着しています。

様々な素材で作られた、世界各国の珍しいふくろうの置物、彫刻、玩具などが展示されています。これらの展示物は全て、個人からの寄贈から成り立っています。

回廊美術館

豊島区役所の建物全体をミュージアム(美術館・博物館)に見立て、豊島区の文化や歴史、美術や工芸品などを展示・紹介しています。3階から8階まで、回廊美術館となっています。


としまエコミューゼタウンが建っている位置は、池袋駅付近の市街地から少し離れているので、ゆっくりするのに適しています。区民へのサービスの向上だけでなく、都市の環境にも配慮された建物は、観光にもおすすめのスポットとなります。

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建築概要

設計全般:日本設計
外観デザイン監修:隈研吾建築都市設計事務所
ランドスケープデザイン:ランドスケープ・プラス
施工大成建設
敷地面積約8,324㎡
建築面積約5,319㎡
延床面積約94,681㎡(庁舎部分は約25,573㎡)
最高高さ約189m
構造鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
階数地上49階、地下3階
工期2012年2月~2015年3月
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ご利用案内・アクセス

開庁時間平日:8:30~17:15
土日:9:00~17:00

<豊島の森>
 2~6月 9:00~17:00
 7~8月 9:00~19:00
 9~10月 9:00~17:00
 11~1月 9:00~16:00
閉庁日祝日、年末年始

<豊島の森>
 12月29日~1月3日
 土日以外の祝日、荒天時
電話03-3981-1111(代表)
住所豊島区南池袋2-45-1
アクセス東京メトロ有楽町線 東池袋駅 直結
都電荒川線 都電雑司ヶ谷駅、東池袋四丁目駅 徒歩5分
JR線 池袋駅 東口より徒歩10分


参照元:

豊島区公式ホームページ
としまエコミューゼタウン | PROJECTS | 株式会社 日本設計
都会のオアシス!東京のとしまエコミューゼタウンは「開かれた」庁舎 | 東京都 | LINEトラベルjp 旅行ガイド
「豊島区新庁舎」一般見学会
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