新横浜公園に位置するサッカーや陸上などが行われる競技場「日産スタジアム」は7万席以上ものキャパをもち、2002年FIFAワールドカップの主会場となりました。またの名を「横浜国際総合競技場」といい、1997年10月に完成して以来、1999年には初めてコンサート会場としてB’zのライブが行われ、臨場感のあるスポーツやライブを楽しめられます。また、ショップやレストラン、プール施設も入っています。
設計は松田平田設計と東畑建築事務所。松田平田設計は日本銀行本店新館などを手がけ、東畑建築事務所は、みなとみらいグランドセントラルタワーなどを手がけている、どちらも実績ある設計事務所です。
今回はそんな日産スタジアムの建築を紹介します。
収容人数はどのくらい?工事期間や費用は?

日産スタジアムの観客席は、国内最大級とされる72,327席となります。東京ドームでも約55,000席なので、相当大きいですね。構造的には7階建てになりますが、座席は4~5階部分が1階席、6~7階部分が2階席となり、1階席は34,371席、2階席は37,956席あります。
このうち車椅子用の観客席も、常設で147席、臨時で最大485席が用意されており、誰もが競技を楽しめられます。
工事期間は設計に2年2ヶ月、施工に3年9ヶ月をかけており、工事費用は約603億円になります。

スタジアムの構造は、プレキャスト プレストレスト コンクリート造(PC圧着工法)で建てられています。
プレキャストコンクリートとは、あらかじめ工場で生産して現地で組み立てるコンクリートであり、全国24ヶ所もの工場であらかじめ柱や梁、床や天井などの部材を作成しておき、現場で組み立てたことにより、従来の工期よりも短縮されています。
プレストレストコンクリートとは、引張力に弱いコンクリートに対して、あらかじめ圧縮力をかけておいて引張に強くするコンクリートであり、7万の客席や覆われている屋根を支えます。
神奈川県建築コンクール優秀賞、日本建築学会賞などを受賞しており、建築業界でも認められたスタジアムです。
ダイナミックな外観

日産スタジアムは新横浜公園の一角にあるのですが、建築面積68,313㎡(東京ドームの約1.5個分)の広さがあります。

入口は東西南北の4方向あり、割とアクセスしやすいのですが、面積があるため以外と歩きます。

こちらは西ゲート側から見たスタジアム。50mほど離れた場所から写真を撮りましたが、広角レンズでも入りきらないくらい大規模です。

横に広い建物のため遠目からでは分かりませんが、近づいて行くと意外と迫力があります。
Y字型の鉄筋コンクリート造の列柱が座席を支えている様子がよく分かり、力強さを感じます。

2002年FIFAワールドカップの決勝戦(ブラジルvsドイツ)の記念碑です。

こちらは地下空間であり、座席の真下部分になります。上部を見ると、特殊な構造であることが分かります。

地下空間は道路が舗装され、駐車場がそこら中にあります。
様々な工夫が施された内観
スタジアム内にある座席は、長時間座っても疲れない設計になっており、前席との間が90cmのゆったりしたスペースになっています。1階最前列とトラックとの高低差が75cm(通常の競技場は2m)であり、迫力のある試合が観覧出来ます。2階席はフィールドとの距離を縮めるため10m張り出されており、30度の勾配を取って視界を良好にしています。
屋根は鋼管立体トラスの鉄骨造で丈夫に作られており、観客席の4分の3を覆っているので風の影響を受けにくくなっています。また全長約146mの可動庇となっており、最大5.5mまで伸びます。
照明は580台のLED照明となり、1つごとに角度が調整できるので、選手の影が出来にくく全体を均等に照らします。2,600ルクスの照度があり、一般家庭の電気で50~150ルクスなので、かなりの明るさがあります。また、コンサートとして使う際も様々な演出をすることが出来ます。
芝生は107m×72mの広さがあり、80cm厚の土に生えた自然芝で、土の下は空洞となっています。芝から下30cmの土の中に温水パイプが通っており、温度が調整出来ます。やはり衝撃が少なくなるので、動き周りやすい芝生の構造です。
南北の2ヶ所には955インチもの大型映像装置が設置されており、迫力ある試合の映像が映し出されます。また、会場内に439台ものスピーカーがあるため、会場のどこにいても迫力ある音が聴けます。
選手・観客ともに利用しやすい日産スタジアム。今後もダイナミックなスポーツやライブが繰り広げられる事かと思います。
建築概要
設計 | 松田平田設計、東畑建築事務所 |
---|---|
敷地面積 | 164,054㎡ |
建築面積 | 68,313㎡ |
延床面積 | 172,758㎡ |
高さ | 最高:51.96m、軒高:43.86m |
階数 | 地上7階 |
構造 | 鉄筋コンクリート造(PC圧着工法)、屋根部分は鉄骨造 |
工期 | 設計:1991年8月~1993年10月 工事:1994年1月~1997年10月 |
アクセス
電話 | 045-477-5000 |
---|---|
住所 | 神奈川県横浜市港北区小机町3300 |
アクセス | <電車> JR横浜線 小机駅 徒歩7分 横浜市営地下鉄 新横浜駅 徒歩12分 JR横浜線 新横浜駅 徒歩14分 <バス> 以下の駅から「日産スタジアム前」へのバスが出ています ・JR横浜線・横浜市営地下鉄 新横浜駅 から横浜市営バス(300系統) ・JR横浜線・横浜市営地下鉄 新横浜駅 から東急バス(綱72系統) ・横浜市営地下鉄 仲町台駅 から横浜市営バス(300系統) ・横浜市営地下鉄 新羽駅 から東急バス(綱72系統) ・東急東横線 綱島駅 から東急バス(綱72系統) ・東急田園都市線 溝の口駅 から東急バス(直行) |
参考元:
・日産スタジアム|横浜国際総合競技場 公式サイト
・横浜国際総合競技場「日産スタジアム」 | 松田平田設計
・横浜国際総合競技場(日産スタジアム) | 東畑建築事務所