「川崎市大山街道ふるさと館」の特徴的な建築

01.現代建築
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川崎市高津区にある大山街道の歴史資料などが保存・展示されている「川崎市大山街道ふるさと館」はコの字型平面の建物で、モダンな雰囲気の中庭をもち、内部はスロープ空間が半分ほどを占める建築となっています。大山街道に関する歴史資料の展示室の他、市民が利用する会議場やイベントホールも入っている複合施設です。

設計は富永讓+フォルムシステム設計研究所。富永讓(とみなが ゆずる)氏は、菊竹清訓建築設計事務所を経ており、独立してからBCS賞や環境建築賞など数々の賞を受賞しています。

今回はそんな川崎市大山街道ふるさと館の建築を紹介します。

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大山街道はどんな道?

引用:大山街道 | 川崎国道事務所 | 関東地方整備局ホームページ | © Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism. Kanto Regional Development Bureau.

まず、施設名となっている大山街道から説明いたします。

江戸の赤坂御門から、神奈川県伊勢原市にある大山阿夫利神社までの道を指しており、東海道と甲州街道の間に位置する、江戸に繋がる脇往還(わきおうかん。五街道以外の支街道で休泊機能の備わった道)です。大山街道の中でも川崎市内では、溝口村と二子村が宿として定められました。

江戸時代中期に大山詣りが庶民の間で流行り、この大山街道が有名になりました。その後、江戸時代後期には食料などの物資を運ぶ輸送路として活用されます。そして現在では、国道246号線となっています。

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外観・中庭

川崎市大山街道ふるさと館のファサード

道路側から大山街道ふるさと館のファサード(正面)を見ると、2つのボリュームで構成されていることが分かります。右側のボリュームは会議室やイベントホールなどが入っている部分であり、左側の細いボリュームはスロープと階段室が入っている部分となります。

右側のボリュームは、1階部分がピロティおよび入口となっており、ピロティの奥には中庭が見えます。

川崎市大山街道ふるさと館の入口

入口の横には、風情ある木製の灯籠のような看板があります。

川崎市大山街道ふるさと館のガラス壁展示

ピロティの脇には、ガラス板に大山街道の昔の写真や地図などがプリントされ展示されています。

川崎市大山街道ふるさと館の中庭

ピロティを奥に進むと、モダンな雰囲気のある中庭に出ます。白壁に四角い窓が並んだ手前にイスとテーブルが置かれ、その横には樹木や芝生が施されて癒やしのある空間になっています。

円形の階段が中庭の風景を形作る主な部分ですが、進入禁止になっていました。

川崎市大山街道ふるさと館の外部スロープ

中庭の階段の先はスロープとなっており、各階にアクセスする形になっています。(進入禁止になっていますが。)

川崎市大山街道ふるさと館の外観

建物を前面から見ると陸屋根(フラットな屋根)ですが、中庭側から見ると切妻屋根(山型の屋根)のようになっています。そして、中庭の休憩スペースの所にあった四角い窓と同じ窓が、建物上部にも並んでいます。

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内観

川崎市大山街道ふるさと館のフロアマップ

入口から入るとすぐに受付があり、受付の横にはスロープが巡る空間となっています。

川崎市大山街道ふるさと館のスロープ空間

1階にある展示室の他、スロープの壁にも多くの資料が展示されています。

川崎市大山街道ふるさと館のスロープ空間

スロープ空間の1階から見上げた様子です。3階まで吹抜けており、ガラスブロックの窓と天井照明によってとても明るくなっています。

川崎市大山街道ふるさと館が建つ前にあった高津町役場の建築模型

1階展示室の手前には旧高津町役場の模型が置かれています。大山街道ふるさと館は、旧高津町役場跡地に建てられた施設です。

川崎市大山街道ふるさと館の展示室

こちらは展示室。省スペースのこの空間には、大山街道の歴史を物語る写真や調度品などが展示されています。

川崎市大山街道ふるさと館のスロープ空間

こちらは、1階から2階へ通じるスロープです。横には大窓が開いており、光をふんだんに取り入れています。

川崎市大山街道ふるさと館の内部から見た中庭

大窓からは中庭の様子が伺えます。(ガラスに花の絵が描かれています。)

川崎市大山街道ふるさと館のみちまちラウンジ(談話コーナー)

2階には、みちまちラウンジ(談話コーナー)があります。自動販売機があり、誰でも気軽に休憩出来ます。

川崎市大山街道ふるさと館の3階から見下げた様子

スロープの一番上、3階から見下げた様子です。こうして見ると、スロープ空間がとても明るくなっているのが分かります。

川崎市大山街道ふるさと館の和室

3階には会議室(2部屋)和室(1部屋)が備えられています。

川崎市大山街道ふるさと館の階段室

スロープ室の脇には階段室があり、丸窓や縦長窓などがある特徴的な空間です。

川崎市大山街道ふるさと館の階段室
川崎市大山街道ふるさと館の螺旋階段

屋上に出るための廻り階段がありました。屋上からの風景を楽しみたいところですが、危険を伴うため立入禁止となっていました。

大山街道ふるさと館は、気軽に休憩が出来る場であり入館無料の資料館なので、もし溝の口・高津に訪れた際には、大山街道の歴史および特徴的なスロープ空間を見に訪れてみてはいかがでしょう。

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建築概要

設計富永讓+フォルムシステム設計研究所
延床面積1094.6㎡
階数地上4階
構造鉄筋コンクリート造
竣工1992年
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ご利用案内・アクセス

開館時間9:30~21:30(展示室は10:00~17:00)
休館日年末年始(12/28~1/4)、展示切替期間
入館料無料
電話044-813-4705
住所神奈川県川崎市高津区溝口3-13-3
アクセス東急田園都市線 高津駅 徒歩5分
東急田園都市線 溝の口駅 徒歩7分
JR南武線 武蔵溝ノ口駅 徒歩7分

※2021年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。


参考元:

川崎市大山街道ふるさと館|トップページ
川崎市大山街道ふるさと館|ジェクト株式会社
富永譲+フォルムシステム設計研究所
大山街道 | 川崎国道事務所 | 関東地方整備局ホームページ

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