「国立新美術館」を設計した建築家は?その建築の特徴とは?

01.現代建築
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日本で5館目に六本木に建てられた「国立新美術館」。ぐにゃぐにゃした独特な外観は好き嫌いが分かれそうな気がしますが、大規模な展示スペースを持ち、2016年時点の調査では、美術館の入場者数は国内第2位となっています。

ちなみに入場者数の第1位は金沢21世紀美術館です。意外にも首都圏ではないですね。21世紀美術館についても、当サイトで紹介させていただいています。

設計者は黒川紀章氏。ご存知の通り、あの東京都知事選挙、第21回参議院議員通常選挙に出馬した建築家です。代表作は他にも、中銀カプセルタワービル、豊田スタジアムなどがあります。

今回は国立新美術館について、建築情報をまとめてみました。

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美術館が完成するまで

国立の美術館としては日本で5館目であり、2007年1月に開館しました。国立の美術館は1977年(昭和52年)に開館した国立国際美術館以来、実に30年ぶりとの事です。
この美術館を設立したのは、展覧会の開催、情報収集、情報公開、教育普及などを目的としています。

国立美術館の中では唯一、コレクション(美術館独自の所蔵作品)を持たないため常用展示はなく、公募展・企画展のみ行われており、いわゆるアートセンターとしての役割を果たしています。
この美術館のコンセプトは 森の中の美術館
手前には青山霊園があり、都心にありながら周辺は割と緑豊かな環境となっています。

工事時期は4年程ですが、設計も含めると実に20年以上もの時間をかけてプロジェクトに取りかかっています。
設計段階で相当、国と揉めたんではないかと想像してしまいます…。
ちなみにこの敷地は、二・二六事件ゆかりの旧日本陸軍歩兵第三連隊駐屯地の跡地であり、旧歩兵第三連隊兵舎が一部現存された別館があります。
その兵舎の全体像の模型が、美術館の入口近くに展示されています。

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独特な曲線の外観

外観はぐにゃぐにゃした形が特徴のガラス面となっていますが、青山霊園の緑が眺められ、コンセプトの通り森の中にいるような感覚を覚えます。

ガラス外面には、エッチング処理されたガラスに水玉模様を施した緑のルーバーを設置し、金物で吊り下げて庇の役割をしています。
このルーバーはひとつひとつ場所によって全て形が違うので、ガラスの形を確認しながらのルーバー製作は大変な作業だったのではないかと思われます。

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かなり余裕のあるパブリックスペース

展示室の手前のパブリックスペースにはレストラン、カフェ、ミュージアムショップなどがあり、展示室以外の面積は他の美術館に比べると相当広いです。
自由に使える椅子とテーブルが並べられ、来訪者が展示室を出て気軽に休めるようになっています。

巨大な逆円錐状の最上部にはレストランやカフェが設置され、最上部まで吹き抜けており解放感溢れています。
外壁もインテリアコーンも、工場であらかじめ作成されたプリキャストコンクリートを使用しています。黒川氏によると、現場で型枠を作成してコンクリートを流して作ると、綺麗な面を作るためにその場で型枠を叩いたりしてとても大変だが、プリキャストであればクオリティコントロールがしやすいとの事です。

床面はフローリング、壁面は木製ルーバーとなっているため、それによって騒音が軽減されています。
また、床面から吹き出す空調システムを採用しており、居心地の良い空間となっています。
床面をフローリングにするには、木材が変形して平らな床面を維持出来ないため、国から反対されたようです。
ですが、フローリングにはアイアンウッドという耐久性に優れた木材を使用しています。比重が水より重く堅い木なため変形しにくく、外壁やテラス等で雨に当たっても200年は腐らないようです。

そして美術館内には、10ヶ所の多目的トイレ、車椅子対応エレベーターを設置しており、出入り口はスロープ、また乃木坂駅6番出口から美術館まではバリアフリーで入場出来るようになっています。
車椅子や杖の貸し出しもしており、高齢者や障害者に優しい施設です。

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広大な展示スペース

従来の公募展は東京都美術館を使用してきましたが、公募団体の間で展示品数に対して展示スペースが狭いという不満の声があり、新たな展示スペースを作るため、この美術館は建設されました。

引用:国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO © Copyright NACT. All rights reserved.

国内最大級の展示スペースを持ち、2,000㎡の展示室を7つ備え、合計14000㎡もの展示室面積を持っています。
金沢21世紀美術館で合計4072㎡、国立西洋美術館で4420㎡なので、相当広い展示スペースですね。
この美術館は美術業界(学芸員・主催者側)からは非常に評判が良く、搬出入のしやすさ、展示の自由度、休憩スペースなど、使いやすさを追求し機能性を重視しています。
美術館の裏側は、複数の公募展が同時に行われても対応出来るよう、充分な広さのトラック用プラットフォームやバックヤードを持っています。また、審査員による審査などを円滑に行えるよう、環境の良い審査会場、審査員控室も持っています。

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都市計画としても成功を収める

アクセスマップを見て頂くと、東京ミッドタウンから乃木坂駅の動線の一部になっていて、人が集まりやすいポジションとなっています。

引用:国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO © Copyright NACT. All rights reserved.

街並みの一部として人の流れを結んでおり、美術館の中は人々で賑わっています。
美術館としてだけでなく、街並みの中の休憩空間としての役割も兼ねており、都市計画の面でも成功を収めていると言えます。
都内には落ち着いて休める場所があまり見当たらず、歩き疲れてしまいますよね。
そんな時こそ、これからの美術館は街づくりも兼ねた計画、街との連携が重要になってくるかと思います。

国立新美術館の別館についても別記事で紹介していますので、是非合わせてご覧下さい。

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建築概要

設計黒川紀章・日本設計
施工鹿島建設
敷地面積約30,000㎡
延床面積約49,834㎡
階数地上6階、地下3階
構造鉄骨造、鉄筋鉄骨コンクリート造
工期2002年~2006年
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アクセス

住所東京都港区六本木7-22-2
アクセス東京メトロ千代田線 乃木坂駅 美術館直結
東京メトロ日比谷線 六本木駅 徒歩4分
都営大江戸線 六本木駅 徒歩4分


参考元:

国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
【世界建築巡り】世界の素敵な建築を紹介するサイト
国立新美術館 建築とランドスケープ:地上の楽園を求める旅
国立新美術館 – Wikipedia
国立新美術館 PROJECTS 株式会社 日本設計
国立新美術館-東京ミッドタウン 線の継承 – 建築デザイナーズブログ 「For Your House」 by Integrated Network kc2
政治的な建築 黒川紀章とのインタビューTokyo Art Beat – ニュース、レビュー、インタビュー

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