「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」の建築を鑑賞するという楽しみ方

01.現代建築
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2019年2月28日に東京・中目黒にオープンした、店舗内にて珈琲豆を焙煎する「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」は、コーヒー好きにはたまらない居心地の良いところです。

ロースタリー東京は、シアトル、上海、ミラノ、ニューヨークに続き、世界で5番目の店舗となります。今までは既存の店舗がロースタリーに改装されていましたが、東京では初めて一から建物を設計しています。
内装デザインはリズ・ミューラー氏。スターバックスのチーフデザインオフィサー(デザインの最高責任者)です。外観デザインは隈研吾氏。新国立競技場や高輪ゲートウェイ駅を手がけた建築家です。

土日には整理券を発行して番号順での入場になるほどの人気ぶりです。

今回はそんな「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」の建築の見どころを紹介します。

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巨大な銅製のキャスク

店の中心に設置された巨大な銅製の設備は、高さ17m、直径4.6mにもなる焙煎設備が内蔵されたキャスク。各階にパイプが伸びており、豆を運ぶ様子が見られます。
また、貯蔵庫の役割も果たしており、焙煎後の豆が7〜8日間貯蔵され、飲める状態に加工されます。

キャスクの外側は銅製のパネルで作られており、手打ちによる細工が施され、このような表面形状となっています。
春になると、キャスクの近くには目黒川に咲く桜をモチーフにした、画像のようなレリーフが吊り下げられます。これは、目黒川の桜への敬意のしるしだそうです。

スターバックスリザーブロースタリー東京の店内にある巨大な銅製のキャスク

リザーブロースタリーのロゴが描かれたこのキャスクは、この店のメインと言える施設です。
キャスクの銅板の色が、店内全体の雰囲気に合っています。

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内観

内装設計は、スターバックスのチーフデザインオフィサー(デザインの最高責任者)であるリズ・ミューラー氏によるデザインです。様々な箇所に特徴的なデザインが施されています。

天井

天井は、三角形の木製パネルをつなぎ合わせた、折り紙をモチーフにしたデザインです。巨大な開口部から入ってきた光が天井に反射し、トップライトと共に店内全体を程よい光で穏やかに照らします。

天井の裏にはスピーカーが埋め込まれており、また、折り紙天井の木材によって雑音を吸収するので、しっかりとスピーカーの音が聴こえ、優れた音響を作り出しています。

店内は洋風の雰囲気ですが、このような日本的なデザインとうまく組み合わされていると思います。

2階へ登る階段の壁には、スタバの紅茶ブランドである「ティバーナ」のティーカップをイメージして作成されたティーカップ ウォールがあります。

カップの方向が互い違いに付けられ、目を引くデザインになっています。
この壁に付けられたカップは、日本の優れた技術を持ったタイル職人が手作業でカップを作り、取り付けられています。

その他にも、珈琲を注文すると以下のようなコーヒーカードがもらえるのですが、このカード5000枚を壁一面にびっしり張ったコーヒーカードウォールもあります。

このコーヒーカードは、生産国・生産地ごとにデザインされたものとなります。

ティーカップウォール、コーヒーカードウォールの他にも、目黒川沿いに住むアーティストが実際に作品を描いた壁もあり、注目してみると面白いと思います。

家具

バーカウンターや、テラスのイスやテーブルには東京の杉が使われています。大きな丸太の状態のものを山形で製品に加工し、再び東京に持ってきたものです。
釘を使わずに木を組み立てるという、日本の技術を取り入れています。

杉材を薄い板状に切り出して、0.6~1.2mmにプレスして重ね合わせ、家具を作り出しています。杉は柔らかい木材で、本来は家具には不向きなのですが、それを日本の職人技によって家具に仕上げています。

こういった日本の技術を取り入れた木製の家具には、コーヒータイムをより幸せなものにしたいという思いが込められているそうです。
木材の家具によって、暖かい雰囲気が作られている気がします。

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外観・テラス

建物の外観デザインを手がけたのは、世界的建築家の隈研吾氏です。外観は隈研吾建築らしいデザインとなっています。

外観デザイン

外観は五重塔のような層のようになっており、テラスの庇は杉板で大和張りで仕上げています。大和張りとは、板を1枚おきに重ねて張る方法であり規則的な凸凹の仕上がりになります。
新国立競技場でも、庇部分に杉材を使用しています。

スターバックスリザーブロースタリー東京の外観

リザーブ ロースタリー限定のスタバカードが売られており、そのスタバカードには建物外観が描かれています。

五重塔のような外観にすることで、日本的な外観デザインに仕上がっています。

テラス

各階にテラスが設けられ、目の前に流れる目黒川と桜並木、そして代官山の街並みや、遠くには渋谷や六本木などの都市の風景が見えます。
このような風景を眺めながらコーヒーを楽しむ事が出来るように、テラスが設けられました。春になると目黒川沿いに咲く桜が満開になり、より一層景色が楽しめます。

隈研吾氏は建物と周辺環境をどのように統合していくかに興味がありました。このテラスは縁側のような場所です。この日本的な空間を、スターバックスというアメリカからやってきた文化と融合させることで、世界に唯一の空間をつくろうと考えました。と述べています。
テラスは、都市との連続性を獲得することを目的として作られました。

スターバックスリザーブロースタリー東京のテラス席

心地よい雰囲気のあるテラスで飲むコーヒーは、より一層美味しく感じます。

プランター

建物の西側のテラスには、いくつものプランターを吊しており、周辺の景観と合わせるように外観デザインを彩っています。

直径16.3mmのワイヤーでアルミ製のプラントボックスを支え、軽やかに見せています。また、プランターの中央を貫く管が給排水の役割を果たし、植物に水分を供給します。雨樋の代わりに、こういった機能を備える事によって雨水を再利用しています。

リザーブロースタリーは、ロースターという最新の機能性を持つため、隈研吾氏をそれに呼応するように給排水設備を備えたプランターによって、建築の機能提案を行いました。
プランターは、ファサードのデザインを作る役割と共に、機能的な役割も持った設備となります。

隈研吾氏とリズ・ミューラー氏は、日本の伝統を感じさせながらモダンな感じにするという考えを共有し、間取りや開口部、階段などのレイアウトを、話し合いながらプロジェクトをこなしていきました。

隈研吾氏は、この店をリビングルームのように使われることを期待し、設計を進めていきました。そして日本の建築家と海外のデザイナーの融合によって、リザーブロースタリーは絶妙な暖かさとお洒落さを持った建築になったと思います。

こちらは、アイスにコーヒーをかける「アフォガート」。
環境の良いテラスで頂くメニューは絶品です。

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建築概要

設計外観:隈研吾
内装:リズ・ミューラー
施工鹿島建設
敷地面積1,207.1㎡
建築面積885.02㎡
延床面積3,237.52㎡
高さ20m
階数地上4階、地下1階
構造鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造
工期2017年8月15日〜2018年10月31日
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ご利用案内・アクセス

営業時間7:00~23:00(ラストオーダー22:30)
定休日不定休
電話03-6417-0202
住所東京都目黒区青葉台2-19-23
アクセス東急東横線 中目黒駅 徒歩14分
東急田園都市線 池尻大橋駅 徒歩14分


参考元:

STARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYO|スターバックス コーヒー ジャパン
Starbucks Reserve® Roastery Tokyo | Architecture | Kengo Kuma and Associates
この場所は東京という街の‟リビング”だ。建築家・隈研吾が「スターバックス リザーブ ロースタリー」に込めた思いとは。
建設データバンクKDB

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