移転予定の「静嘉堂文庫美術館」の建築。「静嘉堂文庫」「岩崎家廟堂」も合わせて紹介

01.現代建築

世田谷区に貴重な自然が残された岡本静嘉堂緑地は、三菱財閥を築き上げた岩崎家が所有する庭園であり、そこには「静嘉堂文庫」「岩崎家廟堂」「静嘉堂文庫美術館」の名建築があります。

もともと静嘉堂緑地は、三菱の第二代社長の岩崎彌之助氏の三回忌にて、第四代社長の小彌太氏が霊廟を県立するために購入した土地であり、1945年頃まで維持管理がされていましたが、その後、約40年もの間は人の出入りが無く、ほぼ自然状態のままとなっていたそうです。

1910年に岩崎家廟堂が、1924年に静嘉堂文庫が小彌太氏によって建てられ、その父の彌之助氏が収集した古美術品を収蔵・展示していました。1992年には静嘉堂創設100周年を記念して静嘉堂文庫美術館が建てられましたが、2022年に丸の内に展示機能の移転が予定されています。静嘉堂文庫および美術館には、約6500点もの東洋古美術品が収蔵されています。

今回はそんな岡本静嘉堂緑地にある、静嘉堂文庫、岩崎家廟堂、静嘉堂文庫美術館の建築を紹介します。

静嘉堂文庫

静嘉堂緑地の正門から森の中をしばらく歩くと、静嘉堂文庫の建物が見えてきます。

三菱の第四代社長の岩崎小彌太氏が、父にあたる第二代目社長の彌之助が収集した日本・中国の古典籍や古美術品を収蔵し、研究者に公開することを目的に建設されました。静嘉堂文庫が出来る前は、駿河台の岩崎家邸内に収蔵、その後、高輪邸の別館(現在の開東閣)に移り、そして1924年に現在の場所に静嘉堂文庫が建てられ収蔵されました。

静嘉堂文庫の設計は桜井小太郎氏。イギリスで建築を学んだこともあり、イギリス風デザインの建築を主に手がけてきました。岩崎小彌太氏もイギリスに留学してケンブリッヂ大学を出ており、桜井氏と意気投合して出来た建築となります。

地上2階の鉄筋コンクリート造、外壁はスクラッチタイル貼り、屋根は青銅で葺かれており、イギリスの郊外住宅をイメージしたデザインとなっています。静嘉堂文庫の手前には噴水を花壇で囲った庭園があり、建物のデザインと相まって英国風の風景が表現されています。

正面入口はレンガのアーチがかかり、手前の大きな樹木の間を通って入っていく形となっており、アプローチのデザインが樹木と一体となっています。

古典籍を永く保存するため、一般人には内部非公開となっており、明確な目的をもつ研究者や大学教授などが利用する専門図書館となっています。ちなみに内部の間取りは、1階に玄関ホール、ラウンジ、閲覧室などがあり、2階には応接室などがあるようです。

スクラッチタイルは大部分が横向きに貼られていますが、窓の上下は縦向きに、てっぺんの部分は市松模様のように貼られているので、タイルの貼り方に注目してみるのも面白いと思います。また、煙突の形も特徴的であり、階段状のデザインが施されています。

静嘉堂文庫を横から見た様子です。森の中に建つ住宅といった雰囲気で佇んでいます。

移転については、この静嘉堂文庫とは別の建物の、静嘉堂文庫美術館の展示機能のみとなるため、移転後も静嘉堂文庫の外観は見学することが出来ます。

静嘉堂文庫美術館

静嘉堂文庫のすぐ近くには、静嘉堂文庫美術館があります。岩崎彌之助氏が収集した絵画、彫刻、書跡等の美術品、小彌太氏が収集した中国陶磁などが展示された美術館です。

設計は高木建築設計事務所。静嘉堂創設100周年を記念して新設され、1992年4月に開館しました。1977~1992年までは静嘉堂文庫内の展示館で、美術品が展示されていました。

入口の外壁の御影石に、美術館前の花壇や樹木が自然と一体化しており、ひっそりと佇んでいます。

美術館内部は、1階が展示室と広間、地下階は講堂となっています。

美術館は丘の上に位置するため、階段室にある大窓からは美術館裏の庭園や、街の風景が一望出来ます。

広間から見た風景です。画像の奥に見える、美術館の隣にある建物は、かつて鑑賞室として使われていました。レンガ貼りに青銅の屋根が特徴の建物です。

美術館裏の庭園入口は、美術館入口のすぐ横に、渡り廊下を潜るようにして入ります。

鑑賞室で使われていた建物のバルコニーです。現在はシャッターが閉まっています。

バルコニーから見た美術館の様子です。移転してしまいますが、丘の上に建つ美術館は景色が良く、なかなか良い場所だと思います。

今後この美術館は、開館30周年の2022年に、丸の内の明治生命館1階に展示ギャラリーが移転されます。ただ、展示機能の移転のみであり、美術品の保管や研究、そして静嘉堂文庫や庭園は継続して管理されます。

岩崎家廟堂

静嘉堂緑地の中には、岩崎彌之助氏夫妻と、小彌太氏夫妻、忠雄氏夫妻の三代が眠る岩崎家廟堂(びょうどう)があります。静嘉堂緑地はもともと、この廟堂を建てるために小彌太氏が購入しています。

設計はジョサイア・コンドル氏。静嘉堂文庫を設計した桜井小太郎氏の師匠であり、高輪邸(現在の開東閣)や三菱一号館美術館、ニコライ堂などを設計したイギリス人建築家です。

廟堂の前には、植物のような壮麗な装飾がされた大香炉が置かれています。

両側には狛犬が、片方は口を開けて、もう片方は口を閉じて、阿吽を表現した形で居座っています。

廟堂の扉には、親孝行を題材にした中国の24の故事が表現されています。内部は、黒と白の大理石で作られているそうです。

後ろ側から見た様子です。中央にドーム屋根、その四方にはヴォールト型(かまぼこ型)の屋根がデザインされており、ニコライ堂の形式を思い起こさせます。

静嘉堂という名前は、先祖の霊前にお供え物が整うという意味であり、中国古典「詩経」の「籩豆静嘉」(へんとうせいか)というフレーズから来ています。美術館の移転によって一般の方が足を運ぶ機会は少し減りそうですが、岡本静嘉堂緑地内の建物は、今後も大切に管理されることかと思います。

ご利用案内・アクセス

開館時間静嘉堂緑地:10:00~16:00
静嘉堂文庫:10:00~16:20
休館日静嘉堂緑地:月曜日
静嘉堂文庫:月曜日・土曜日・日曜日・祝祭日、夏期(8月中旬)、年末年始
入園・入館料静嘉堂緑地、静嘉堂文庫ともに無料
電話静嘉堂緑地:03-3417-9575(公園管理事務所)
静嘉堂文庫:03-3700-2250
住所東京都世田谷区岡本2-23-1
アクセス<電車>
 東急田園都市線 二子玉川駅 徒歩23分
<バス>
 二子玉川駅から東急バス(成城学園前駅行または玉川病院循環) 静嘉堂文庫 下車徒歩7分

※2021年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認下さい。


参考元:

静嘉堂文庫美術館 公式サイト
vol.14 静嘉堂文庫美術館 | 三菱グループサイト
丸ノ内へと旅立つ〈静嘉堂文庫美術館〉の国宝と建物を愛でる。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

コメント

タイトルとURLをコピーしました